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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画48【古本/ホラー漫画(立風書房)】



 ひばり書房のヒット・コミックス怪談シリーズや、立風書房のレモン・コミックス恐怖シリーズ等の黒い背表紙のホラーコミックスは、現在で言えばぶんか社のホラーMコミックスや、講談社のKCサスペンス&ホラー、小学館のちゃおホラーコミックス等の立場に相当するのでしょうが、現在はインターネットですぐに情報が広まる時代なので、そもそもどんな名作・駄作であっても人知れず埋もれてしまうという事が一切無い為、有難味が無い様にも思えてしまう反面、好みの作品の登場をすぐに知る事が出来る便利さは歓迎すべき事なのかも知れません。それにしても、最新の作品が有名であるが故に人気が高まって、絶版から僅か数年ですぐに復刻され、ますます有名になるといった事が多い一方で、昔のマイナーなホラー作品に対する冷遇が全く改善される気配が見られない事は、余りに不公平である様に思えます。昔の作品ももっとたくさん復刻されるなどして、容易に多くの人の目に触れる機会が与えられても良い様に思うのですが…。
 今回は8/10に購入した10册のホラーコミックスの内、立風書房発行の物を集めてみました。

 「学校で夜、幽霊が!(GAKKOU DE YORU、 YUUREI GA!)」 浜慎二(HAMA SHINJI)・・・・・1976年8月15日発行の描き下ろし単行本。土曜日の夜、刺繍の宿題がバッグの中に入っていない事に気付いた順子(JYUNKO)は、学校に忘れたのかと思い取りに行くが、誰も居ない暗い夜の学校で、少女の霊を見た事を皮切りに、様々な怪現象に襲われる。それでも何とか宿題を持って帰って無事に完成させるが、月曜日に提出しようとバッグから出すと、刺繍の模様が血の手形に変化していた。怯えた順子は宿題を提出せず、罰として先生から別の宿題を言い渡されるが、家に帰ると、またもやバッグに入れた筈の宿題が無くなっていた。1人で学校へ捜しに行く事を恐れた順子は、父に頼んで教室まで付いて来て貰うが、またも少女の霊が現れたばかりか、父の姿までもが不気味に変化して見えてしまう。そして怪現象は、次第に自宅までをも侵食し始める…。
 学校が終わって、友達とお喋りをしながら家に帰り、父からの電話に出て、昼食を食べて、母からお使いを頼まれるが断わり、ピアノ教室へ行って、帰って来てからおやつを食べて、またも母からの頼みを断わり、宿題をしようとバッグを開けて…といった具合に、怪現象と関係の無い序盤の土曜日の放課後の描写だけで24P。発表当時の普通の小学生の日常生活が滅茶苦茶細かく描写されていて、一見無駄な部分も多い様に思えるものの、それ故に「日常の中の非日常シミュレーション」としてのリアリティは高く、当時の小学生読者にとっては、非常に感情移入し易かったのではないかと思われる。必要以上の荒唐無稽さは無く、最後にちゃんと幽霊の正体や順子に付き纏った理由も解り、誰も死なずに終わる等、地味ながらも非常に良心的な内容の良作です。

 「恐怖!マリア学園の地下室に…(KYOUFU! MARIA-GAKUEN NO CHIKASHITSU NI…)」 浅井まさのぶ(ASAI MASANOBU)・・・・・1980年1月15日発行の描き下ろし単行本。私立のミッションスクール・マリア学園の開校初日、朝礼の最中に、主人公・佳子(KEIKO)の友人・君枝(KIMIE)が暑さに倒れ、医務室に運ばれる。しかし園長は「病院に連れて行った方が良い」と言う医務の先生の意見を、事を大きくするなと却下。君枝は酷い発作を起こした挙句、翌日校舎の屋上から飛び降り自殺してしまう。医務の先生は責任を取って辞めさせられ、数日後、後任教師の青山(AOYAMA)が学園に赴任して来るが、その直後から、君枝の霊が佳子を襲ったり、奇妙な虫が大量に発生して生徒達を襲う等、不可解な出来事が次々と起こり始める。果たしてこれ等の事件は君枝の怨霊の仕業なのか、それとも青山が何かを企んでいるのだろうか?何かを隠しているらしい園長が、隠された事実に迫る青山を学園から追い出そうとした時、いよいよ最後の事件が幕を開ける…。
 他の単行本の倍近いページ数があり、息を付かせる間も無く次々と怪事件が起こって、事件の原因を読者にミスリードさせる様な要素もある等、かなり読み応えのある作品となっている。気になった点と言えば、女子高が舞台であるにも関わらず、主人公の佳子以外殆ど全員狙ったかの様に不細工に描かれている為に、作品全体の絵的な質まで落としてしまっている事。ごく僅かに美女も居るのだが、登場頻度はかなり低い。虫に襲われた者は皆肩に人面疽が出来て恐ろしい形相になる為、せめて襲われる前ぐらいは皆美女に描いてあげて欲しかった。最初の犠牲者となる君枝も、見た目のインパクトとミスリードの為だけに顔に大きなアザがある設定にされてしまって、凄く気の毒だ。

 「たたりの古井戸(TATARI NO FURUIDO)」 大石まどか(OOISHI MADOKA)・・・・・1981年8月15日発行の描き下ろし単行本。市議会議員であり建設会社社長でもある岸勇司(KISHI YUUJI)は、市民会館建設の為、建設予定地の一角を占める大きな屋敷を立ち退かせる。その屋敷では老婆と孫娘が2人だけで暮らしていて、病弱な孫娘の詩子(UTAKO)は保養地で療養生活を送っており、週に一度帰って来ては、敷地内にある井戸の中に浮かぶ母の姿に話し掛ける事が、唯一の心の安らぎであった。療養所に来た祖母から立ち退きの事を聞かされた詩子は1人で屋敷へと戻るが、偶々様子を見に立ち寄った岸に見付かってしまう。追い出されそうになり抵抗する詩子のバスケットを井戸に放り込んだ岸は、井戸の前でうなだれる詩子を放ってその場を立ち去る。屋敷の取り壊し工事の際、少しでも早く工事を進めたい岸は、「井戸を潰す時には井戸まつりを行い、水神様を祀らなければならない」と言う従業員の忠告を無視して井戸を埋め立てるが、その直後から、岸の周囲で様々な怪現象が起こり始める…。
 怪現象が始まるのは、岸が詩子を屋敷に放って行った後なのだが、暗い屋敷内を見回っている最中の描写もかなり気味が悪くて、早くも何かが起こりそうな気配を感じさせられる。後半は、詩子の霊に取り憑かれた岸の娘の紗知子(SACHIKO)の奇行や、詩子とダブって見える姿が主な恐怖の対象となるのだが、今回の件に直接関係が無いにも関わらず、最後は死んでしまう紗知子は余りにも可哀相。岸も時既に遅しとは言え、己の傲慢さを最後には反省するのですが、結局死んだのは2人の幼い少女だけだったという所に、作中の主要登場人物達にも、そして読者にも、非常に悲しい余韻を残して物語は終了します。

 「死人の足音が近づく(Zombie NO ASHIOTO GA CHIKADUKU)」 ムッシュー・田中(Monsieur TANAKA)・・・・・1985年4月15日発行の描き下ろし単行本。今から1700年前の弥生時代、邪馬台国の女王卑弥呼は、自分に逆らった狗奴国(KUNAKOKU)の者達が許せず、降伏すれば族長の命だけで許すと言った約束を破って、一族を全て火炙りにして処刑してしまう。そして現在。主人公・秘魅子(HIMIKO)は、母が運転する車で、幽霊トンネルとして名高い湘南の逗子(ZUSHI)トンネルに差し掛かった際に不安を訴えるが、その不安は的中し、突然車の前に飛び出して来た謎の女性によって母が襲われてしまう。退院して家に戻って来た日から様子がおかしくなり始めた母は、遂には秘魅子に襲い掛かり、秘魅子は父が経営するレコードレンタルショップへと助けを求めに行くが、父も、そして周囲の人々も皆母と同様に恐ろしい形相となって秘魅子を追い回す。とうとう捕えられてしまった秘魅子は、族長と呼ばれる人物によって、密かに父の店の地下に造られていた彼等の隠れ家へと連れて行かれてしまう。彼等の正体は、かつて卑弥呼によって滅ぼされた狗奴国の怨霊が人々に乗り移って死人(Zombie)と化した者達であり、卑弥呼の血を引く秘魅子を儀式に則って処刑し、ゾンビ化して彼等の奴隷とする事で復讐を果たそうとしていたのだった…。
 まず女王卑弥呼による狗奴国討伐という歴史上の事件を発端に、逗子トンネルにて実際に怪奇現象を体験した人々への取材レポートを掲載し、ゾンビ登場の際にはブードゥ教のゾンビについて言及する等、荒唐無稽な話に出来る限りリアリティを持たせようとした努力は買えると思います。しかし1700年もの長きに渡る復讐を果たすべく、町の過半数の人間をゾンビ化するという壮大且つ大掛かりな設定の割に、秘魅子の周りだけでこぢんまりと話が纏まってしまっている印象があるので、町の人々が組織的に侵食されていく様子をもっと盛り込んだ方が良かったかも知れません。また、最初に秘魅子の母を襲った女性の正体が結局うやむやなままなのも気になる所。この作品では、生きている人間に怨霊が取り憑いた場合も、操られている死体も、両方「死人(Zombie)」と称するのでややこしいのですが、恐らく母を襲った女性は元々母に似た姿の死体が操られていたのであり、母の方は襲われた際に狗奴国一族の怨霊が取り憑いてゾンビ化したのでしょう。最終的に父も母も皆元に戻っている事から、少なくとも殺されてゾンビにされた訳ではないという事が解ります。あと、女性キャラは皆必要以上にセクシーでとても良い!

 「恐怖!白骨の池(KYOUFU! HAKKOTSU NO IKE)」 広永マキ(HIRONAGA MAKI)・・・・・1982年8月15日発行の描き下ろし単行本。都心から離れた郊外に江戸時代からある大きな屋敷を買い、引っ越して来た江本(EMOTO)一家。鬼門に当たる屋敷の東北に池を作った事から、娘の千代子(CHIYOKO)が池で溺れたり、度々布団や床が濡れていたり、母の夕子(YUUKO)が病に倒れ、別人の様にやつれて奇行が目立つ様になる等、様々な怪異が一家を襲い始める。この屋敷で過去に一体何があったのか?あの池にはどんな秘密があると言うのだろうか?衰弱してとうとう入院してしまった母から離れた霊は、今度は千代子に取り憑き、友人のりょう子(RYOUKO)とりょう子の兄・健治(KENJI)は、何とか千代子を救おうとするが…。
 だだっ広い夜の屋敷内の様子や障子に映る影等は、かなり不気味に描かれており、実害よりも雰囲気で怖がらせる正統派の和風ホラーといった印象。霊に取り憑かれた母の言葉から断片的に事情が語られるものの、屋敷に纏わる事実が明らかになるのは物語の終盤であり、最後は誰1人命を落とす事も無くハッピーエンド。ヒロインの千代子はお金持ちの上品なお嬢様といった感じの美少女で、そばかすの委員長・りょう子も、美人ではないものの、かなり良い感じの女の子ですよ。

 「牡羊座呪いの学園祭(OHITSUJI-ZA NOROI NO GAKUENSAI)」 広末マキ(HIRONAGA MAKI)・・・・・1986年1月15日発行の描き下ろし単行本で、他に「さそり座」「双子座」「乙女座」も描かれた星座恐怖シリーズの1つ。
 戦国時代、鬼神(ONIGAMI)に命を捧げ、戦で無敵を誇った夕月(YUUDUKI)城の女城主・妖姫(AYAHIME)。彼女は美男の誠之助(SEINOSUKE)に惹かれて鬼神との誓いを破り、鬼神の像を収めたお堂の中で誠之助に求婚した事から、武運を失い、敵の奇襲によって落とされた城と運命を共にする…。そして現在。夕月城跡地に建てられた夕月学園に於いて創立百年祭が行われる事になり、演劇部が上演する夕月城物語で、主人公・吉川まゆみ(YOSHIKAWA MAYUMI)は妖姫を演じる事になった。誠之助役はボーイフレンドの加賀(KAGA)とあって、張り切るまゆみだったが、練習中に怪我をして主役の座を転校生の大沢志乃(OOSAWA SHINO)に奪われてしまう。更に志乃はまゆみから加賀をも奪おうとする一方、妖姫の扮装をした何者かが学内の者を脅かす事件が相次ぎ、皆は志乃の仕業に見せ掛けたまゆみの仕業ではないかと噂し、まゆみは追い詰められていく。そしてまゆみは、ある日とうとう志乃の正体を知ってしまう…。
 「星座恐怖シリーズ」と銘打たれているだけあって、2人のヒロイン・妖姫とまゆみはどちらも牡羊座であり、牡羊座が暗示する性格設定が成されている上に、所々に星座に関する説明が加えられている等、かなり凝った作りとなっている。行動派でめげない性格のまゆみは如何にも少女漫画のヒロインといった感じで親しみ易く、ギャグ要素もあり、恐怖の対象となる妖姫にも悲しい事実が隠されている等、全体的に正統派の少女漫画として綺麗に纏まっているといった印象。4年前に描かれた「恐怖!白骨の池」とは随分雰囲気が変わっている様にも思えるが、りょう子とまゆみが同じ元気なそばかす少女という共通点があり、作者にとって動かし易いキャラだったのではないかと思われる。他の星座恐怖シリーズも、是非とも何とか入手して読んでみたいと思います。
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学校で夜、幽霊が!
懐かしい 小学校の時分読んで、自宅の二階に行けなくなったなあ。わんぱくの友人二人が家に遊びにきて、この漫画を見せたら、「こんな、怖くないわ」といったのに、読み始めてから、急に静かになって、その後、おとなしく帰って行ったなあ。
NONAME 2011/01/15(Sat)19:18:53 編集
夜の学校というシチュエーション、子供には…
 コメント有難うございます。「学校で夜、幽霊が!」は、「誰も居ない夜の学校で怪奇現象に見舞われる」というシチュエーションが、対象読者層である子供には非常に身近に感じられるでしょうからね。変化球ではなく直球勝負ですから…。虚勢を張っていた子供もおとなしくなるというものでしょう。
 私もリアルタイム発刊当時、興味はあるけど怖いので、「酸っぱい葡萄」の様に読みもせずに「面白くなんてない筈だ」と決め付け、殆どこのシリーズに手を出さなかった事を後悔して、今更ながら集め始めている所です。作者が真摯に作品に向き合って、一生懸命子供を怖がらせようと(楽しませようと)していたのだと思うと、頭が下がる思いが致します(まぁ上では勝手な書評をしていますが…)。もしまだ所有しておられるのなら、是非とも大事にして下さい。
manken99 2011/01/15(Sat)20:23:37 編集
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