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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画52【古本/ホラー漫画】



 相変わらず昔のマイナーなホラー漫画を少しずつ集める日々が続いていますが、見付けるのに非常に苦労した物が傷んだり汚れたりしていた場合、同じ物をもう一度見付けて買い直す事は不可能に近いので、古本屋に本を売りに行く人は、どうかむやみに本を傷めたりせず、出来る限り綺麗なまま売りに行く事をお願いしたい。とりあえずカバーをセロテープで留めるのだけは止めてくれ…。
 今回の本は8/11・9/4に入手及び購入した物。「購入」ではなく「入手」したのは、友人から貰った「美内すずえ傑作選① 妖鬼妃伝(MIUCHI SUZUE KESSAKU-SEN① YOUKIHI-DEN)」です。今回は短編集が多い為、感想文がかなり長くなってしまいました。画像の左上から順に紹介。

 「たたりの夜泣き地蔵(TATARI NO YONAKI JIZOU)」 やすだたく(YASUDA TAKU)・・・・・1981年3月15日発行の描き下ろし単行本。文政5年(1822年)、京都近郊の村で得体の知れない疫病が発生。体中に斑点が出来、苦しみ抜いた挙句に必ず死んでしまうその病気に罹った息子を、自らの手で楽にしてやった甚吉(JINKICHI)は、息子を弔う為の地蔵を彫り、息子の死体と共に山奥へと運ぶ。そして現代の東京。彼女とのデート資金が足りない一郎(ICHIROU)は、妹の京子(KYOUKO)に借金しようとするが断わられ、父が大事にしている壷を勝手に持ち出して骨董屋に売りに行く。その際に、野道に転がっている地蔵が物好きな蒐集家に高く売れると聞いた一郎は、何処かから3体の地蔵を見付けて来て骨董屋へ持ち込むが、その内1体には気味の悪い斑点状の染みがあった為に引き取って貰えず、処分を妹に押し付ける。地蔵を墓地に捨てに行った京子だが、その夜顔に斑点状の染みが出来、段々と恐ろしい形相になっていってしまう。一方一郎の方も体が石の様に硬くなり始め、医者にも原因が解らないこの症状は地蔵のたたりだという結論に達し、2人の症状が進行する中、父の運転で皆は一路、一郎が地蔵を見付けて来た京都へと向かう…。
 京都化野(ADASHINO)の念仏寺(NENBUTSU-JI)が舞台として登場し、著者あとがきでも構想のヒントとなった事が書かれており、物語のリアリティを増す事に繋がっている。たたりで変化した2人の形相や、顔中に包帯を巻いた京子の姿がかなり恐ろしい。和尚の祈りは余り役に立たなかった様で、少々気の毒にも思えるが、最後の我が子を想う父の姿にはとても胸を打たれる。

 「百年少女(HYAKUNEN SHOUJYO)」 浜慎二(HAMA SHINJI)・・・・・1982年8月15日発行の描き下ろし単行本。父を亡くし、市立の母子寮に住む大町由加里(OOMACHI YUKARI)は、新しい転校先の学校に馴染めず、友達が出来ないまま寂しい日々を過ごしていた。ある日、以前飼っていた犬とそっくりな犬を連れた少女・真理(MARI)と出会い、犬の散歩をきっかけに仲良くなる。彼女の家には犬が四匹も居て、可愛い犬達の事が気に入った由加里は毎日遊びに行くが、何故か毎日犬が一匹ずつ居なくなっていく。実は真理は、ばあやと共に、毎日動物や時に人間の子供を殺しては、その血を自分をモデルに作られた石こう像に与え続ける事で、百年も歳を取らずに生き長らえているという恐ろしい存在であった。そしてとうとう由加里も捕えられ、石こう像のある部屋へ連れ込まれてしまう…。
 生き長らえる為に石こう像に血を与え続けていたと言うよりは、そうしないと生きていけなかったと言った方が正しく、真理とばあやもまた、呪われた石こう像による犠牲者だったと考えて良いかも知れない。百年間も毎日毎日動物や人間を殺し続けていたとは、気の遠くなる様な話だ。最後は当然由加里は助かってハッピーエンドとなるのだが、真理はかなりの美少女なので、最後に一気に百年分の歳を取って、醜い老婆の姿となり死んでしまう事が、非常に残念に思われる。

 「13日のゾンビ(13NICHI NO Zombie)」 谷間夢路(TANIMA YUMEJI)・・・・・1990年11月13日に発行された、ホラー短編を7本収録した作品集。
 表題作「13日のゾンビ」は掲載誌及び掲載時期不明。ヒロインの久美(KUMI)は陽子(YOUKO)の恋を応援するべく、陽子が書いたラブレターを原(HARA)に届けようとするが、原が好きな相手は久美であった。陽子に本当の事が言えず、原がラブレターを受け取ってくれたと嘘を吐く久美。陽子は「恋をみのらせるカバラの呪文が効いた」と喜ぶが、実はその呪文は愛する者を地の底より蘇らせるという死人蘇生の呪法であった。誤って蘇らせてしまったゾンビに父を殺されてしまった陽子は、今度は父を蘇らせ、更に原が久美を好きだと知って、ゾンビの集団に2人を襲わせる。
 「おそろし進化論(OSOROSHI SHINKA-RON)」は掲載誌及び掲載時期不明。ある日人間の顔をした不気味なヤモリを目撃した由起(YUKI)は、同じ生物クラブに所属する原(HARA)から、人間の顔をした昆虫を見たと聞き、その現場へと向かう。現場で何かを埋めたらしい跡を掘ってみると、そこには口の中に芋虫を詰め込んだ人物が埋められていて、突如その人物が起き上がって来る。驚いた2人は学校へ逃げ帰り、先生に報告するが、先生やクラスメート達も皆同様に口一杯に芋虫を詰め込んでいて、由起を仲間にしようと迫って来る。
 「泥の顔(DORO NO KAO)」は掲載誌及び掲載時期不明。早川(HAYAKAWA)にからかわれて自転車の運転を誤り、田んぼに落ちてしまったリエ(RIE)。以後、事ある毎に顔全体が泥に変化し、その泥の中からヒルまで現れ、遂には顔全体がヒルに覆われる様にまでなってしまうが…。泥に変化したリエの顔を見ても動じず、タタリの原因を突き止めようと行動する早川が男らしくて立派だ。
 「寄生顔(KISEIGAN)」は掲載誌及び掲載時期不明。美湖(MIKO)の家の隣に住む受験生はノイローゼ気味で、度々自分の体を傷付ける奇行を繰り返していた。ある時、美湖の目の前で、自分で自分の顔を包丁で削ぎ落とすという壮絶な最期を遂げる受験生。以後、美湖は悪霊に取り憑かれ、身体中に気味の悪い顔が無数に浮かび上がる様になってしまう。死んだ受験生も、この「寄生顔」に取り憑かれていたのだった…。
 「恐怖こないで悪魔虫(KYOUFU KONAIDE AKUMA-MUSHI)」は掲載誌及び掲載時期不明。麻美(MAMI)の周辺で、突如人間の体が燃え上がり、足首だけを残して燃え尽きてしまうという人体発火現象が頻発。この現象は「悪魔虫」と名付けられた生物兵器による物であった。
 「おいしい生血(OISHII IKICHI)」は掲載誌及び掲載時期不明。好きな男性の為に痩せようと決意した理沙(RISA)は、公園で出会った美容コンサルタントの女性から、痩せる為の美容法のビデオを貰って実戦するが、実はそれは吸血鬼の罠であった。
 「私の顔が笑わない(WATASHI NO KAO GA WARAWANAI)」は掲載誌及び掲載時期不明。転校生・藤谷(FUJITANI)は、絶対に笑わない事から、意地悪なクラスメートに言い掛かりを付けられ虐められそうになるが、その直後、クラスメート達は首をもがれたり頭を潰されるといった凄惨な死を遂げる。実は彼女には笑えない事情があった…。
 普段の可愛い絵柄と残虐且つグロテスクなシーンとのギャップが凄まじく、理不尽な展開やバッドエンドも多いが、日常生活のシーンはギャグ度が高く、「泥の顔」や「おいしい生血」等はオチもほのぼのとしていて、独特の世界観を作り上げている。グロテスクなシーンには恐怖感よりも嫌悪感の方を強く抱いてしまう事も多いが、何故か何度も読み返したくなる、癖になる作風だ。ヒロインの名前や設定は作品毎に違っているが、スターシステムにより全作品同一人物が配されていると思われ、可愛く誰からも好かれるタイプで、怪現象に対しても素直に怖がってくれる彼女は、ホラー漫画に於ける理想的な被害者役だと言えるだろう。

 「真夜中の少女(MAYONAKA NO SHOUJYO)」 かずはしとも(KAZUHASHI TOMO)・・・・・1991〜1993年に発表されたホラー短編を5本収録した作品集。1994年1月13日発行。
 表題作の「真夜中の少女」は、「月刊少女フレンド」1992年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。夜遅くまで薬局の店番をしていたツトム(TSUTOMU)は、人懐っこく好奇心旺盛な少女・ユウ(YUU)と出会う。毎日何故か夜にだけ現れるユウ。ある日彼女が落としていった財布を拾い、中にあった診察券を頼りに家まで届けるが、そこに居たのはユウに似ている由布子(YUUKO)という名の別人であった。由布子とユウの関係は…?
 「メモリー(Memory)」は「月刊少女フレンド」1992年4月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。11歳の桜子(SAKURAKO)は、22歳の親戚の尚也(NAOYA)に恋心を抱いていたが、尚也には11歳の頃に初恋の女の子を病気で亡くしたという悲しい思い出があった。尚也が大学を卒業して故郷に帰る事になったある日、桜子は夢の中で、自分の前世の記憶を知る。
 「切れたミサンガ(KIRETA Micanga)」は「月刊少女フレンド」1993年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。兄が所属しているバンドに度々出入りしているえりか(ERIKA)と友人の亜紀(AKI)。手作りのミサンガに願を掛けている亜紀は、えりかにもミサンガをくれ、えりかは兄のバンドでギターが弾ける様になる事を願う。そしてその願いは、ギターのノブ(NOBU)が事故で入院してしまった事で叶うが、ノブの事が好きなえりかは罪悪感から、亜紀がミサンガの話をする度につらく当たる様になってしまう。一方、ミサンガの願いが叶ってノブへの片想いが実った亜紀だったが、その所為でえりかと仲違いしてしまい、亜紀は再びミサンガに願を掛ける…。
 「伝言板(DENGONBAN)」は「月刊少女フレンド」1993年4月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。彼氏が居ないのに見栄を張って友人達に嘘を吐いた美冬(MIFUYU)は、駅の伝言板に架空の彼氏からの伝言をいたずら書きするが、後日本当に理想の男性・知樹(TOMOKI)が現れ、2人は付き合う事になる。しかし同時に美冬への悪意ある嫌がらせが相次ぎ、美冬は以前から度々付き纏っていたクラスメートの信藤(SHINDOU)を疑うが…。
 「3年めの聖夜に…(SANNENME NO Eve NI…)」は「月刊少女フレンド」1992年1月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。1988.12.24、由惟(YUI)と待ち合わせをしていたさおり(SAORI)は、由惟が遅れた為に、交通事故に遭って死んでしまった。そして1991.12.24、同窓会で、かつてのさおりとの待ち合わせ場所の近くを通り掛かった由惟は、さおりの霊に付き纏われる。由惟を待っていたと言うさおりは、由惟をあの世に連れて行こうとしているのだろうか…?
 「切れたミサンガ」のえりかと亜紀、「伝言板」の美冬と信藤、「3年めの聖夜に…」の由惟とさおり等、主人公が解らず屋で、友人が人並外れた好人物であるというパターンが多い。どちらかと言うと友人の方が、人の好さが報われずに散々な目に遭う事が多く、言わば陰の主役といった立場だと思うが、そちらが主人公ではないという点が印象的だ。取り返しが付かなくなってから、自分の間違いや相手の真意に気付く事の恐ろしさや悲しさが、重要なテーマの1つとなっているのだろう。ハッピーエンドであれバッドエンドであれ、どちらとも言えないエンディングであれ、全ての作品に於いて、遠く過ぎ去った過去や平和だった頃の日常に懐かしさや寂しさを感じさせる様な、不思議な余韻が読後に残る。裏表紙に書かれた「魅惑のネオ・ロマンチック・ホラー集」という呼び名が相応しい、情緒的な作品集。

 「美内すずえ傑作選① 妖鬼妃伝(MIUCHI SUZUE KESSAKU-SEN① YOUKIHI-DEN)」 美内すずえ(MIUCHI SUZUE)・・・・・1973〜1981年に発表された中編ホラー作品を3本収録した作品集。1995年12月19日発行。
 表題作の「妖鬼妃伝(YOUKIHI-DEN)」は「なかよし」1981年9月号〜11月号に連載。友人・ターコ(TA-KO)と共に地下鉄でデパートへ買い物に行った主人公・秋本つばさ(AKIMOTO TSUBASA)。デパートで開かれていた日本人形展を見学した後、忘れ物を取りに戻ったターコはそのまま行方不明となってしまい、5日後、何故かデパートがある駅から2つ隣の駅で、電車に撥ねられて死んでしまう。デパートに行った日に駅で見掛けた男性・九曜(KUYOU)と出会い、地下鉄に纏わる異様な噂を聞いたつばさは、友人・久美(KUMI)と共に閉店後のデパート内を調べ始め、その際に平安時代の貴族の様な衣装を身に纏った人々が地下鉄に乗って、存在しない筈の駅へと向かう所を目撃する。そこに建てられた平安時代の宮殿、そして部屋に置かれたたくさんの人形達。彼等が崇める妖鬼妃とは一体何者なのだろうか…?デパート内や宮之内(MIYANOUCHI)と呼ばれる場所を探索している時の息苦しいまでのスリルと、何時もの生活空間へ戻って来た時の開放感が素晴らしい。
 「白い影法師(SHIROI KAGEBOUSHI)」は「月刊ミミ1975年10月号(創刊号)に掲載。主人公・長谷部涼子(HASEBE SUZUKO)が転入した私立藤園(FUJIZONO)女子高校2年E組には、5年前から空席になっている席があった。その席に座った際に体調が悪くなり、背後に人の気配を感じた涼子は、その後も怪現象に悩まされ、5年前にその席で死んだ女生徒が居た事を知る。病弱なその女生徒は、友人に嫌われたくない一心で無理をして学校へ来て、6時間目にその席で死んでしまったのだと言う。彼女の霊に取り憑かれてしまった涼子は、このままでは取り殺されてしまうと言う霊能者の助言を受け、霊に打ち勝つべく、彼女が死んだ10月6日にもう一度同じ席に座り、運命の6時間目を迎える事となる…。子供の頃に読んでトラウマになった作品としてよく名前が挙がる作品の1つですが、非常に正統派の心霊漫画といった感じで、終盤まで霊の姿を明確には描かず、更衣室で歩いて来る足だけが見えたり、教室を撮った写真に人魂やドアの隙間から覗く手だけが写っているといった具合に、ラストに向かって少しずつ恐怖感を盛り上げていく演出が素晴らしい。
 「みどりの炎(MIDORI NO HONOO)」は「別冊マーガレット」1973年9月号に掲載。駆け落ちして砂漠の中の町へと嫁いだ姉に会いに来たキャロル(Carol)。しかし美しかった姉は別人の様にやつれ、町の人々は排他的で他所者の来訪を異常なまでに嫌っていた。常に砂嵐の脅威に晒されているこの町は、町の東側にある広大な森に守られているのだが、その森には恐ろしい秘密があった…。最後は森も町も全ては巨大な砂嵐に飲み込まれ、跡形も無く埋もれてしまう。「なにもなかったの…なにもかもおわったのよ」「すべてが砂に埋まってしまったいま あの町でのできごとはあたしの思い出の中にしかないのよ……」最後にキャロルが言ったセリフは、この漫画を読み終えた読者にも、全ての出来事が丸で夢であったかの様に感じさせて感慨深い。

 「あなたが怖い…(ANATA GA KOWAI…)」 井口かのん(IGUCHI KANON)・・・・・1990〜1995年に発表されたホラー短編を4本収録した作品集。1996年1月12日発行。
 表題作の「あなたが怖い…」は「月刊少女フレンド」1995年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。好きだった相手・宮島高文(MIYAJIMA TAKAFUMI)に告白してOKされ、付き合い始めた原さおり(HARA SAORI)。付き合って4ヶ月目になってもキスもせず未だに名字で呼び合う等、真面目過ぎる彼に距離を感じている一方、表情豊かで会っていると安心出来る彼の弟・優(YUU)に、さおりは惹かれ始めていた。ある時、怒りの感情を露にして、優に殴り掛かっている高文を目撃した事から、さおりは高文に恐れを抱き始める…。
 「ジェラシー(Jealousy)」は「月刊少女フレンド」1993年4月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。美咲(MISAKI)は親友のカナコ(KANAKO)から、幼馴染みの恭二(KYOUJI)を紹介されて付き合い始めるが、デートには何故か毎回必ずカナコが付いて来る。カナコに内緒でようやく2人だけで会えたと思ったら、会話の内容はカナコの事ばかりで、それ以外は話が弾まない。しかも内緒で会った事をも恭二はカナコに話したらしく、その後も恭二とカナコが2人で会っている所を見掛けた美咲は、2人の仲を疑い始める…。
 「絵夢(EMU)」は「月刊少女フレンド」1994年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。子供の頃、売れない小説家のパパが話してくれる空想話が好きだった絵夢。しかしある日両親は大喧嘩をして離婚し、絵夢はヒステリックなママに引き取られる。何を話してもママの癇に触って怒鳴られる事から、絵夢は次第に口数が少なくなり、学校でも「暗い」と皆から疎外され、虐められる様になってしまう。そんなある日、不思議な少年が現れて絵夢の味方をしてくれる様になるが、何故か彼の姿は絵夢以外には見えないらしい。彼は絵夢が作り出した幻なのだろうか…?
 「暗黒石(ANKOKUSEKI)」は「少女フレンド」1991年1月5日号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。友人が有名な占い師に見て貰っている間、人気の無い占い師のおじさんと話していた里穂(RIHO)は、〝思い〟のパワーを増幅してくれると言う石を貰い、望んだ事が次々と叶って順風満帆の日々を送る様になる。しかしある時ちょっとした不安を抱き始めた事から、その不安までもが的中する様になってしまい…。
 超能力や不思議な石といった超自然的な物を扱った話もあるが、基本的には全て身近に起こり得る、人と人との心のすれ違いによる不安が恐怖のテーマとして描かれており、リアリティーはかなり高い。ほんの少し相手に説明すべき言葉が足りなかったり、そもそも聞く耳を持っていなかったり等、読んでいて焦れったさを感じさせる部分も多々あるが、現実にもこういう事は多そうな気がする。繊細な絵柄で可憐な少女達が描かれているが、何と全ての作品で主人公が最後には不幸になるというバッドエンドを迎えており、なかなか侮れない内容だ。

 「怖いくらい当たるから…(KOWAI KURAI ATARU KARA…)」 井口かのん(IGUCHI KANON)・・・・・1993〜1996年に発表されたホラー短編を4本収録した作品集。1997年1月13日発行。
 「罪の迷宮(TSUMI NO MEIKYUU)」は「月刊少女フレンド」1993年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。放送部部員・栗原美砂(KURIHARA MISA)の憧れの男性・ユキ(YUKI)先輩は、現在礼子(REIKO)先輩と付き合っているが、礼子には、以前ユキと付き合っていた麻生(ASOU)からユキを奪った為に、麻生を自殺に追い込んだという噂が付き纏っていた。礼子の事を快く思わない美砂は、礼子に対しちょっとしたいたずらを仕掛けるが、その直後に礼子は交通事故で死んでしまう。罪の意識に苛まれ、ユキと親密な関係になる一方で皆から嫌われ始めた美砂は、今の自分が礼子と同じ立場である事を自覚し始めるが…。
 表題作の「怖いくらい当たるから…」は「月刊少女フレンド」1995年6月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。明確な答えが知りたい洋美(HIROMI)は、占い師の曖昧な返事に不満を抱いていたが、ある時とても良く当たると評判の占い師の事を知り、様々な相談事を持ち掛ける様になる。そうして全ての事が上手く運ぶ様になったものの、実の所「こうしなければ幸せになれない」といった具合に、行動をコントロールされる様になってしまっているとは気が付かない洋美であった…。
 「おとな狩り−夜は子どもの時間−(OTONA-GARI −YORU HA KODOMO NO JIKAN−)」は「月刊少女フレンド」1996年6月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。家では成績の事で親にガミガミ言われ、学校が終われば夜遅くまで塾通い。塾帰りにお喋りをしながら過ごす僅かな時間だけが、3人の中学生達にとっての幸せな時間であった。そんな楽しい時間を邪魔する大人達を毎晩狩り続ける3人だったが、やがてそれも終わる日がやって来る。
 「逢いたい…(AITAI…)」は「月刊少女フレンド」1996年1月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。独りぼっちの家の中で、誰かが来るのを待ち続ける少女・雪乃(YUKINO)。子供の頃は兄と隣の家の孝宏(TAKAHIRO)と3人で何時も一緒に遊んでいたが、2人が大学に受かってから、兄は余り家に帰って来なくなり、孝宏も遊びに来なくなってしまった。その事に寂しさを感じていた雪乃は、それでも今日来る筈の誰かを待ち続ける。
 どの話も明確に「ホラー」というジャンルには分類しづらい変則的な内容となっており、不思議系・怪奇系のショートショートを漫画で読んでいる様な、不思議な味わい深さが感じられる。これは作者自身がホラーが苦手である為に、他人を怖がらせる為のホラーではなく、自分が怖いと思うシチュエーションを、とても素直に作品化した結果ではないかと思われる。バッドエンドには主人公の自業自得的な側面もあるものの、やはり可憐な少女が苦しんだり悲しんだり悲惨な結末を迎える展開には、心が痛みます。

 「今日のニュース(KYOU NO News)」 井口かのん(IGUCHI KANON)・・・・・1991〜1998年に発表されたホラー短編を7本収録した作品集。2005年8月20日発行。
 表題作の「今日のニュース」は「別冊フレンド」1997年1月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。書店で「自殺の手引」を同時に手に取った2人の男女。何となく人生がつまらない…そんな理由で一緒に死ぬ事を決意した2人は、ひったくったお金で最後の一日を遊び呆ける。車に排気ガスを引き込んで死ぬ方法を選んだ2人は、人を刺して車を奪い逃走。一方、自分の誕生日に母と喧嘩して、友達と遊んで憂さ晴らししていたのぞみ(NOZOMI)は、母に言い過ぎた事を反省して、家に帰る事にするが…。
 「永遠の月曜日(EIEN NO GETSUYOUBI)」は「月刊少女フレンド」1994年12月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。月曜日に学校へ行った美雪(MIYUKI)は、待っていた香奈(KANA)から、以前意地悪した事を詫びられる。そこへやって来た男子生徒から告白された事で勇気を貰った美雪は、2年前の中学時代に好きだった城田(SHIROTA)との約束を破り、そのまま疎遠になってしまった心残りを解消する為、城田の許へと向かう。皆が優しく、皆が前向きに過ごしているこの日は、彗星が衝突して地球が消滅する、地球最後の日であった…。
 「たすけ…て…(TASUKE…TE…)」は「少女フレンド」1991年4月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。祐花(YUKA)と貴(TAKASHI)は付き合っているが、貴が祐花を差し置いて森岡(MORIOKA)にばかり優しくしている為、祐花は同情を引いて人を味方に付ける事が上手い森岡の事を嫌っていた。ある時、森岡の事で貴と言い争いになった祐花は、貴に当てつける為に、母が帰って来る時間を見計らってカミソリで手首を切るが、丁度その時母から「帰りが遅くなる」という電話が掛かってきた…。
 「怖いくらい当たるから…(KOWAI KURAI ATARU KARA…)」は「月刊少女フレンド」1995年6月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。明確な答えが知りたい洋美(HIROMI)は、占い師の曖昧な返事に不満を抱いていたが、ある時とても良く当たると評判の占い師の事を知り、様々な相談事を持ち掛ける様になる。そうして全ての事が上手く運ぶ様になったものの、実の所「こうしなければ幸せになれない」といった具合に、行動をコントロールされる様になってしまっているとは気が付かない洋美であった…。
 「呪文(JYUMON)」は「月刊少女フレンド」1996年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。放課後の教室で桜井(SAKURAI)と岩田(IWATA)がケンカした直後に出会した田辺ちずる(TANABE CHIZURU)は、桜井の話を聞いてあげた事を機に友達付き合いを始めるが、岩田からは桜井に気を付ける様にと忠告される。そしてその忠告通りに、幼馴染みの慎二(SHINJI)を桜井に奪われそうになってしまう。桜井の本性を知ったちずるが取った行動は…。
 「心の凶器(KOKORO NO KYOUKI)」は「サスペンス&ホラー特集号」1998年4月発売号に掲載。幼い頃から好きな事は一切やらせて貰えず、一見選択肢が与えられている様で、その実敷かれたレールの上だけを半ば強制的に、自分で選んだかの様に進まされるだけの人生。三者面談で先生からもっと上のランクの大学を狙えると言われた浅井しおり(ASAI SHIORI)は、両親から志望ランクを上げるかどうか問われるが、上げないと答えると、延々と説教した上に突き放す様な事を言う父。勉強は嫌いなのに、勉強だけが取り柄の自分。好きな事は上手く出来ず、嫌いな事だけ上手く出来る自分。両親の事は嫌いではない。両親に死なれたくなんかない。両親を殺す事は嫌いだ。そして…。
 「おとな狩り−夜は子どもの時間−(OTONA-GARI −YORU HA KODOMO NO JIKAN−)」は「月刊少女フレンド」1996年6月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。家では成績の事で親にガミガミ言われ、学校が終われば夜遅くまで塾通い。塾帰りにお喋りをしながら過ごす僅かな時間だけが、3人の中学生達にとっての幸せな時間であった。そんな楽しい時間を邪魔する大人達を毎晩狩り続ける3人だったが、やがてそれも終わる日がやって来る。
 巻末のあとがきで、ホラーが苦手な作者がホラー漫画を描く様になったきっかけと、ホラー漫画の執筆を止めるまでの経緯が説明されていますが、ホラーが苦手であるにも関わらず、真摯にホラーに臨んだ結果が、他の「他人を怖がらせる為のホラー」とは一線を画す、独特の味わい深い作品が数多く生み出される事に繋がったのでしょう。地球消滅という突拍子も無い設定の作品が1本と、幽霊を扱った作品が1本ある以外は全て現実に起こり得る現実的な恐怖を描いた物語であり、特に「心の凶器」は、最も現実味が有って、最も設定に無理が無く、それでいて最も怖い話だと思います。

 「恐怖!ヒキガエルの呪い(KYOUFU! HIKIGAERU NO NOROI)」 かがり淳子(KAGARI JYUNKO)・・・・・2003〜2004年に発表されたホラー短編5本と、2002〜2003年に発表されたショートギャグ6本を収録した作品集。2004年9月5日発行。
 表題作の「恐怖!ヒキガエルの呪い」は「ちゃおデラックス」2003年8月21日号に掲載。我侭なお嬢様・さやか(SAYAKA)が教室で高価な東京土産を自慢していた所、窓から入って来たカエルが土産物の上に飛び付き、気分を害したさやかはカエルを叩き殺して、土産物も全部捨ててしまう。その後クラスメートの小杉(KOSUGI)をカエルの様だと罵り虐めるさやかだが、ある時巨大なカエルを目撃し、気絶して目を覚ますと、周囲の人間が皆等身大のカエルとなってしまっていた。
 「ダンゴムシと呼ばないで(DANGOMUSHI TO YOBANAIDE)」は「ちゃおデラックス」2003年11月25日号に掲載。道端を這っていたダンゴムシを、踏まれない様にと路肩の植え込みに戻してあげた武田(TAKEDA)は、翌日転校して来た奇妙な女生徒に纏わり付かれ、武田と仲の良い丸山(MARUYAMA)は嫌がらせを受ける。武田がそれを咎めると、女生徒は巨大なダンゴムシの姿となって2人を襲う。
 「怪奇呪いのワカメ(KAIKI NOROI NO WAKAME)」は「ちゃおデラックス」2004年1月22日号に掲載。海辺の村に住む親戚を訪ねてやって来たサユリ(SAYURI)は、ハサミを持った見知らぬ老婆から、その長い髪を切る様にと追い回される。村には女性が髪を短くするという古い習慣があり、それを守らぬ者には恐ろしい災いが降り掛かるとの事。海辺を散歩していたサユリが、自分以外に髪の長い女性を見掛けて近付くと、何とその女性の頭にはワカメが生えていて、髪をよこせと、サユリに襲い掛かる。
 「ブラックホール(Black Hole)」は「ちゃおデラックス」2004年7月1日号に掲載。裏山にある〝神かくしの穴〟と呼ばれる小さな穴を見に行った際にヘアピンを落としてしまい、それを取ろうと穴に手を突っ込んだ事から、大きな黒い穴に吸い込まれる悪夢を見る様になってしまったルミ(RUMI)。悪夢を恐れる余り、眠らない様にしようとするが、やがて起きている時も暗い場所や物陰に自分を吸い込もうとする黒い穴が現れる様になってしまう。
 「黒いキャンバス(KUROI Canvas)」は掲載誌明記無し(描き下ろし?)。美術の特待生として転校して来た神崎やよい(KANZAKI YAYOI)は、異様な集中力で黒いキャンバスに肖像画を描き続ける黒淵絵美利(KUROBUCHI EMIRI)と出会う。やよいをモデルに肖像画を描く絵美利の目的は?
 「ワンダースクールシリーズ(Wonder School Series)」は「ちゃおデラックス」2002年11月17日号〜2003年6月26日号及び「ChuChu」2003年9月19日号にて発表された、喋る人体模型や超強烈な個性派教師達が活躍する、学校を舞台にしたショートギャグ。
 ヒキガエルやダンゴムシやワカメ等、ホラー漫画ではちょっと珍しい動植物を扱っている点が興味深いが、これ等3作品は、見た目のインパクトや勢いで怖がらせようとしている印象があり、「ブラックホール」や「黒いキャンバス」の様な比較的落ち着いた内容の正統派ホラーとは対照的。勢いのある作風はギャグ作品「ワンダースクールシリーズ」の方がより嵌っており、「恐怖と笑いは紙一重」という事を踏まえて、敢えてギャグとも取れる奇抜な設定で恐怖物を描く事に挑戦してみたのかも知れない。絵柄は非常に可愛らしく、魅力的なキャラも多い。一番好きなキャラは黒淵絵美利。
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