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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画54【古本/ホラー漫画(少女漫画系)】



 今回の本は9/15・9/17・9/21に購入した物ですが、全て少女漫画系のホラー漫画となっています。最近嵌っているので、狙ってこのジャンルの物ばかりを色々集めてみました。「少女漫画系のホラー漫画」という同ジャンル内でも、描かれた年代や対象年齢、それに作者によっても当然内容に違いがある為、そうした違いを読み比べてみるのも面白い。一番の違いはやはり「作者自身がどういったシチュエーションや物語を怖いと思っているか?」という点でしょう。単なる一時的なマイブームではなく、今後もコンスタントにこのジャンルの本を買い続ける事になるだろうと思います。短編集が多い為、今回も感想文が少し長くなってしまいました。画像の左上から順に紹介。

 「くらやみに悪魔が!(KURAYAMI NI AKUMA GA!)」 高階良子(TAKASHINA RYOUKO)・・・・・「なかよし」1973年新年特大号の別冊付録として描かれた作品で、巻末に短編を併録したこの単行本は1986年1月5日発行。
 子供達が虐めていた蛇を助けた原田麻希(HARADA MAKI)は、隣の家の犬に襲われて凍った池へと転落し、生死の境を彷徨うが、何とか命を取り留める。次の日の夜、麻希の前に現れた謎の男性は、自分は昨日助けられた蛇で、望みを叶える為にやって来たのだと言って消えてしまうが、隣の犬がバラバラに引き裂かれる夢を見た翌日、実際にバラバラとなった犬の死体を発見して驚く麻希。その日の夜にも現れた謎の男性は、今度は麻希がクラスの副委員長・吉沢(YOSHIZAWA)を自分の物にしたがっていると指摘。自分が吉沢を誘惑している夢を見た翌日、校舎裏に麻希を呼び出して言い寄る吉沢の言動から、夢だと思っていた事は、実は自分も知らない間に起こっていた現実だったという事を知る。真面目で成績が良く、家でも学校でも期待されている麻希は、いい子で居たいが為に、自分の本心を押し殺して暮らして来た。その抑圧された心の一部が飛び出して蛇に乗り移ったのが、謎の男性の正体であり、これまでに起こった出来事は、全て麻希自身が心の奥底で願っていた事だったのだ。しかし麻希はその事を認めず、その後も殺戮や悪事を続ける〝悪魔〟に自分の体を利用させまいと、眠らない事を決意するが…。
 悪魔を倒して、最後の殺人だけは未然に防ぐ事が出来たものの、既に何人もの死者が出た後なので、明確なハッピーエンドとは言い難いかも知れない。しかし1人の死者も出さない様な温い展開でもなければ、怖がらせる為だけに無駄に大勢死者を出すのとも違って、ストーリー上必要な殺戮だけに留めている所が、やはり上手い。
 同時収録の短編「泥だらけの純白(DORODARAKE NO JYUNPAKU)」は、「ファーニー」1969年7月号に掲載。3年振りにアメリカ留学から日本に帰って来た三郎(SABUROU)は、幼馴染みのミサ(MISA)が家出したと聞き、ミサの行方を追って、不良達が集るガラの悪い盛り場を捜し回り、そこで変わり果てたミサと再会する。全16Pの短編だが、ハッピーエンドにジーンとさせられる。
 更に巻末には、1Pの後書き漫画「〈私のシュラ場〉こうして私はがまん家になった!!(〈WATASHI NO SHURABA〉 KOUSHITE WATASHI HA GAMANKA NI NATTA!!)」を収録。編集者におだてられて、休みも取れずに泣きながら仕事を続ける羽目になってしまった作者の、自虐的な実録ギャグ漫画です。

 「魔性の祭壇(MASHOU NO SAIDAN)」 高階良子(TAKASHINA RYOUKO)・・・・・「ミステリーボニータ」に掲載された作品で、第1話「燃える妖星」と第2話「魔性の祭壇」の二部構成となっている。1988年2月5日発行。
 「燃える妖星(MOERU YOUSEI)」は「ボニータ」1987年6月20日増刊号「ミステリーボニータ」No.1に掲載。飛び降り自殺に巻き込まれて頭にけがをし、記憶喪失となってしまった主人公。彼は身内と名乗る少女・鮎川エリ(AYUKAWA ERI)に、彼女が住む大きな屋敷へと連れて行かれる。彼女は育て親の奥村(OKUMURA)と共に、自分を巫女と崇める人々に大金を貢がせた上に、心臓を掴み出して彼等を奴隷にするという、恐ろしい儀式を行っていた。ポケットに入っていた伝票に「小松崎祐(KOMATSUZAKI YUU)」と書かれているのを見付けた主人公は、自分の素性に関する手掛かりを求めて、翌朝小松崎邸を訪れるが、そこに住んでいる老人は矢部(YABE)という人物に襲われている最中であり、「2度とここへは近づくな」と耳打ちして主人公を逃がす。考古学者である彼等は、ユカタン半島のジャングルに眠るマヤ遺跡にて発見した予言書とククルカンの石を巡って対立していた。予言書に書かれた赤い妖星の巫女として生まれた者は、妖星の為に血を捧げ続けなければならない。その巫女として生まれた者こそ鮎川エリであり、彼女の魔力を制御するククルカンの石の正当後継者が、小松崎家の養子として日本に連れて来られた主人公・祐であった。矢部はエリの持つ魔力を自分の物とする為、奥村を殺害し、ククルカンの石を奪うべく、祐を襲う。
 「魔性の祭壇」は掲載誌及び掲載時期不明。ククルカンの石の力でエリの記憶と魔力を封じ、血を求めて起こる発作をザクロを食べる事で押さえ込んで、共に平和に暮らしていた祐とエリ。しかしそこへ矢部の知人であったピサロ(Pizarro)がメキシコから来日し、エルナンド(Hernando)という子供を使ってエリと接触。ククルカンの石を巡る争いが再び始まってしまう。
 道を歩いていて、飛び降り自殺のとばっちりを受けて病院へ運ばれるという、比較的現実的な光景から始まる為、古代文明に伝わる予言や千年周期で現れる赤い妖星の魔力等、ここまで話が膨らむかと言うぐらいスケールが大きくなっていく事に驚かされる。「魔性の祭壇」前半部分での、祐とエリとエルナンドが本当の家族の様に過ごすシーンには、ごく日常的なささやかな幸せが感じられて、心和む思いがするのだが、石の力で魔力を押さえ込んでいるだけでは根本的な解決にはならないので、いずれもっと別の形で決着を付ける必要があるのだろう。カバー折り返し部分のコメントでは「第3話に期待してください」と書かれているのだが、続きに関しては不明。巻末には質問コーナー「良子のコーヒーブレイク」が収録されているが、この作品に限ったQ&Aコーナーではない様で、より詳しい設定や続き等に関しては何も触れられていない。古代文明を扱った他の作品に、何らかのヒントが隠されているかも知れないが…。

 「わたしが消えた!(WATASHI GA KIETA!)」 渡千枝(WATARI CHIE)・・・・・1988年9月13日に発行された、ホラー短編を4本収録した作品集。
 表題作の「わたしが消えた!」は、異世界へ迷い込んでしまったヒロインの物語。入試の日に乗ったバスがトンネル内で事故を起こし、気が付くと何故か自分1人だけがトンネル内に倒れていた吉井美幸(YOSHII MIYUKI)。受験すべき高校では願書が無い為追い出され、中学校に戻ってみても、先生達は誰も彼女の事を知らず、卒業アルバムにも彼女は写っていなかった。いつ戦争になるか解らない状態にあるこちらの世界の日本で、身元不明者が身分を偽っているという疑いを掛けられた美幸は、憲兵から追われる羽目になってしまう。
 「閉じこめられた絶叫(TOJIKOMERARETA ZEKKYOU)」は、山の中で嵐に見舞われ、近くにある洋館へと助けを求めに行った3人兄妹の物語。西洋風の調度品に囲まれたゴージャスな館内では、人々が丸で洋画の様な仮装パーティーを行っていた。先に洋館に向かった筈の兄の事を知らないと言う館の主。兄が居なくなった事など意にも介さず、陽気で親切な人々に囲まれてパーティーに加わる妹のみのり(MINORI)。慎重な性格のさとみ(SATOMI)だけが、この館に得体の知れない違和感を感じていた…。
 「顔のない少年(KAO NO NAI SHOUNEN)」は、事故を起こした不良娘が入院した病院での、謎の少年との交流を描いた物語。再婚した母が、父の連れ子の史子(FUMIKO)ばかりを可愛がり、実の娘である自分の事をないがしろにし続けた為に、ぐれて不良になってしまった美波(MINAMI)。ある日バイクで事故を起こして運ばれた病院は、ある少年の治療の為だけに、実業家である少年の父が建てた特別な病院だった。旅行中の家族に連絡が付かない為、誰も見舞いに来ず寂しい思いをしていた美波は、生まれた時からこの病院に入院し続けている上に、忙しい両親が全く見舞いに来ず、同様に寂しい思いをしていた少年・邦彦(KUNIHIKO)と出会い、以後、彼との交流が始まる。
 「午前二時のデッドゾーン(GOZEN NIJI NO Dead Zone)」理絵(RIE)・小夜子(SAYOKO)・真弓(MAYUMI)の3人が「ゲーム」と称して虐め続けた為に、自殺してしまった山崎瑛子(YAMAZAKI EIKO)。彼女にそっくりな御園鈴子(MISONO REIKO)が新たに転入して来て、当初は再び「ゲーム」が始まりそうになるものの、明るく積極的な鈴子は皆から好かれ、3人とも仲の良い友人関係となっていった。ある時、退屈していた彼女達は、「午前2時に古い鏡の前で呪文を唱えると、自分の死に顔が写る」というゲームを試し、鈴子以外の3人は全員、自分の恐ろしい未来の運命を知る事になる…。
 カバー折り返し部分のコメントで、作者自身が「わたしがいちばん怖いのは、ホントいうと幽霊とかお化けより、戦争や不治の病。」と言っている通り、超常現象そのものよりも、割と現実的な恐怖感の方がメインとして描かれている印象がある。全編に於いて、頼れる筈の相手や拠り所となる場所が、限られていたり失われていったりする不安感が共通して描かれており、何事も無い平凡な日常生活を送れる事の有難味を再認識させられるかの様だ。一番好みのシチュエーションなのは「閉じこめられた絶叫」。「顔のない少年」は、悲しさと感動の両方でとても泣けるお話です。

 「人虫(HITO-MUSHI)」 まつざきあけみ(MATSUZAKI AKEMI)・・・・・1991〜1993年に発表されたホラー短編4本と、描き下ろしのおまけ漫画1本を収録した作品集。1993年7月17日発行。
 「ペニー・ピンチング(Penny Pinching) 」は「増刊ASUKA ミステリーDX」1991年春の号に掲載。圭(KEI)には、貧乏で病気の両親や幼い弟妹の為に働いて生計を立てている純(AYA)という顔見知りの少女が居た。ある日純とそっくりな瞳子(TOUKO)という裕福なお屋敷のお嬢様と知り合った圭は、瞳子と純が、訳あって離れ離れとなった双子の姉妹である事を知る。純は幸せな瞳子を妬んで何時も嫌がらせをしているらしい。そんなある日、圭の姉が何時も電話で話していた萬里(MARI)という少女が、狂言で別人を演じて姉を騙していた事を知った圭は、瞳子と純も別人を演じている同一人物ではないかと考えるが…。
 「おろち(OROCHI)」は「ミステリーDX」1992年3月号に掲載。寂れた温泉街に突如沸き起こったおろち騒ぎ。息子の丈吉(JYOUKICHI)が襲われたと言う村会議員の大熊(OOKUMA)が、おろち退治に100万円もの賞金を懸けた事から、人々が大勢集り温泉街も大繁盛となるが、一連の騒ぎは全てその為の狂言であった。しかし山に隠れていた丈吉が、本当におろちに襲われて命を落としてしまう。
 「鏡の国の亜梨寿(KAGAMI NO KUNI NO ARISU)」は「ミステリーDX」1993年1月号に掲載。勉強が苦手で容姿も普通、好きな男子に見向きもされない事に劣等感を感じていた亜梨寿は、ある日自分を呼ぶ様な声が聞こえて、骨董屋で大きな鏡を買う。ふとした弾みで鏡をすり抜け、鏡の向こうの世界に入ってしまった亜梨寿は、そちらの世界では頭も良く、美人で皆の人気者という立場であった。一度は鏡の中の世界を気に入る亜梨寿だったが、元の世界の良さを知り、鏡は店に返そうと決意する。しかし鏡の向こうの亜梨寿が現れて、お互いを取り替えようと言い出し…。
 表題作の「人虫」は「ミステリーDX」1993年4月号に掲載。ひょうきんで相手を笑わせる事が上手く、教師の罰や不良の虐めからも要領良く逃れている古沢(FURUSAWA)は、実はひょうきんを装っているだけであり、1人になれる山の中で、嫌いな相手の名前を木に打ち付けながら罵倒する事で鬱憤を晴らしていた。その帰りに人の顔をした奇妙な虫を見付けた彼女は、嫌いな奴に似ている虫を殺したり傷付けたりするが、翌日実際にその相手が死んだり怪我をしており、この町の人間は皆あの虫と命が繋がっている事を知る。その後も虫を使って、嫌いな相手に制裁を加え続ける古沢だったが…。
 巻末収録の描き下ろし漫画「おまけ(OMAKE)」は、作者自身が幼少の頃に漫画家に憧れ、漫画の描き方や漫画家になる方法を少しずつ知っていく過程をギャグタッチで描いた実録漫画。シリアスな本編との余りのギャップが笑える。
 4本のホラー漫画は、どれも登場人物達の性格設定が明確であり、行動に無理矢理感が無い為、ハッピーエンドであれバッドエンドであれ、物語そのものをごく自然に受け止める事が出来る。主人公に感情移入しながらも、何処か他人事の様に淡々と出来事を追って行っている様な感覚があり、これまでに読んだどの作家のホラー漫画とも違う、かなり独特の雰囲気が漂っている。その理由は恐らく、作者自身がホラー漫画の読者だった立場から単純に影響を受けて「ホラー漫画を描こう」と思ったのではなく、飽くまで独自に描きたい物を追求し続けてきた結果、描かれた作品だからなのだろう。巻末の「おまけ」の中で、作者と同年代の若手が次々にデビューしていた頃、若手により漫画界が変化していく事にワクワクしている作者の姿が描かれ、「少女まんがでも「アウター・リミッツ」や「ウルトラゾーン」みたいなの描けるかもしれない」というセリフを言っているのだが、このセリフにその事が強く表れている様に思われる。

 「犬木加奈子クイーンズコレクション プレゼント(INUKI KANAKO Queen's Collection Present)」 犬木加奈子(INUKI KANAKO) 2巻・・・・・

 「戦慄!おおぐち女(SENRITSU! OOGUCHI-ONNA)」 牧原若菜(MAKIHARA WAKANA)・・・・・2006〜2007年に発表されたホラー短編6本を収録した作品集。2007年8月2日発行。
 表題作の「戦慄!おおぐち女」は「ちゃおデラックス」2006年春の超特大号に掲載。好きな男子・塚本(TSUKAMOTO)に交際を断られたさとみ(SATOMI)は、やせてキレイになる事で塚本を見返そうとダイエットに励む。そんな折、怪しい人形を拾った事で、人形の取扱説明書に書かれた通りにやせてキレイになり、塚本と付き合う様になったさとみだったが、一方で性格が非常に悪くなり、塚本から別れを宣告されてしまう。更に人形を粗末に扱った事で、さとみの身に恐ろしい出来事が…。
 「呪魚(JYUGYO)」は「ちゃおデラックス」2006年初夏の超大増刊号に掲載。お金持ちで美人だが、非常にプライドが高く高飛車な性格の曽根崎瑠美子(SONEZAKI RUMIKO)。ある時不注意から、父が大事にしている巨大で不気味な姿をした魚を死なせてしまい、以後、彼女の身に魚の呪いが降り掛かる。
 「怨霊ゲーム(ONRYOU Game)」は「ちゃおデラックス」2006年夏の超大増刊号に掲載。彼氏の辰也(TATSUYA)と喧嘩をした真由(MAYU)は、拾った昔のゲームをプレイする事でそのイライラを解消しようとするが、三日も学校を休んでやつれる程ゲームにのめり込んだり、恐ろしい幻覚を見たりする様になってしまう。そして遂には…。
 「招きこたつ(MANEKI KOTATSU)」は「ちゃおデラックス」2007年春待ち超大増刊号に掲載。父の転勤で田舎の古い家に引っ越して来たゆかり(YUKARI)。最初は文句を言っていたが、足が下ろせる掘りごたつの事を気に入り、こたつに入り浸る様になって、こたつの周りは散らかり放題。しかし実はこたつは暫く前から壊れており、こたつの修理の為に電気屋を呼んだゆかりの母は、かつてこたつに炭火を使っていた頃、一酸化炭素中毒で亡くなった子供が居たという話を聞かされる。
 「ソノ顔クダサイ(SONO KAO KUDASAI)」は掲載誌明記無し(描き下ろし?)。ブスな自分の顔を嫌っていた藤本志保(FUJIMOTO SHIHO)は、学校の帰りに不思議なお面屋から、凄くリアルな美女のお面を貰って付け、皆から注目される立場となるが、そのお面には一日二時間しか付けてはいけないという決まりがあった。
 「続・おおぐち女(ZOKU・OOGUCHI-ONNA)」は掲載誌明記無し(描き下ろし?)。美人だが性格の悪い梨乃(RINO)は、自分の引き立て役として利用する為に、太っているみずほ(MIZUHO)と友達付き合いをしていた。ある時突然やせてキレイになったみずほに嫉妬した梨乃は、やせた秘密を問い質し、みずほが拾った例の人形を粗末に扱った為にその報いを受ける事となる。
 バッドエンド、ハッピーエンド、そのどちらでもないエンディングと、主人公が行き着く末路は様々だが、バッドエンドの場合は主人公の自業自得である場合が多く、又、そうしたお約束を逆手に取って、主人公には何の落ち度も無いのに理不尽な不幸に見舞われる場合もあるが、どちらの場合であれ、作者の善悪感が如実に表れている様で興味深い。その辺りが読者の共感を得て、人気の一端を担っている事は間違い無い様だ。終盤まで主人公の奇行を恐怖の対象として描いた後、最後の最後にようやく霊が姿を見せる「招きこたつ」や、約束を破った事で一度は酷い目に遭いながらも、最後はハッピーエンドを迎える「ソノ顔クダサイ」等、読者を怖がらせたり安心させたりする構成力と演出力が優れている。各作品終了後に描かれている小さいカットが、どれも何だか可愛らしい。

 「本当は怖い日本の童謡(HONTOU HA KOWAI NIHON NO DOUYOU)」 今井康絵(IMAI YASUE)・・・・・2006〜2007年に発表されたホラー短編6本を収録した作品集。2007年12月4日発行。
 「うしろの正面だぁれ?(USHIRO NO SHOUMEN DAaRE?)」は「ちゃおデラックス」2006年秋の大増刊号に掲載。郷土の歴史研究のテーマで童謡「かごめかごめ」の真相を探る事になったまゆ(MATU)達のグループは、洪水の犠牲者と人柱を祀った籠目(KAGOME)神社へとやって来るが、その際犠牲者となった村人達の怨念を封じた井戸の封印を解いてしまい、まゆと久住(KUZUMI)は、自分達が人柱とその番人だったという前世を思い出す。
 「とおりゃんせ…(TOORYANSE…)」は「ちゃおデラックス」2007年春待ち超大増刊号に掲載。那美(NAMI)を庇って車に轢かれてしまった恋人の孝祐(TAKAHIRO)。突然現れた謎の少年から「今なら助けられる」と言われた那美は、黄泉国(YOMOTSUKUNI)へと続く道へ案内され、地の底で孝祐と再会するが、「振り返るな」と言われた帰り道で振り返ってしまい、変わり果てた姿の孝祐と亡者の群れに追われる事となる。
 「花いちもんめ(HANA ICHI-MONME)」は「ちゃおデラックス」2007年春の大増刊号に掲載。姉の存在を確信しているひとみ(HITOMI)に対し、周囲の人々は皆姉の事など知らないと言う。戸籍からも抹消されてしまっている姉の所在を求めて廃病院へとやって来たひとみは、この街では要らない子供は臓器売買の為に売られているという恐るべき事実を知る。
 「あした天気になぁれ(ASHITA TENKI NI NAaRE)」は「ちゃおデラックス」2007年初夏の大増刊号に掲載。雨女だと言われて虐められていた志摩子(SHIMAKO)が自殺し、その後もずっと雨が降り続ける中、今度は早苗(SANAE)が虐めっ子達から雨女の疑いを掛けられ、1週間以内に晴れなければ虐めてやると言われてしまう。たくさんてるてる坊主を作って願を掛けても一向に雨は止まず、追い詰められた早苗が最後に取った方法とは…。
 「2人の王子〜月の砂漠〜(FUTARI NO OUJI 〜TSUKI NO SABAKU〜)」は「ちゃおデラックス」2007年夏の超大増刊号に掲載。晴香(HARUKA)の幼馴染みの健(KEN)と英人(EITO)は、今や学校でNO.1・NO.2を誇る人気の男子。ある時晴香は英人の事を好きになり、健にその事を相談した所、健は晴香を誘って、科学者だったひいおじいさんが残したと言う「好きな人と永遠に結ばれる宝物」を探しに向かう。
 「暗闇からの使者(KURAYAMI KARA NO SHISHA)」は「ちゃおデラックス」2007年秋の大増刊号に掲載。猛暑が続く中、ペットが行方不明になるという事件が頻発。居なくなった犬のチョコ(Choco)を捜す為に家を出た沙紀(SAKI)は、チョコの首輪を持っていた克彦(KATSUHIKO)を犯人だと疑うが、誰も気付かぬ所で確実に勢力を伸ばし続けていた〝アイツら〟は、人間を襲い世界を支配するべく、遂に一斉にその姿を現した!
 最後の「暗闇からの使者」以外の5本は全て童謡がモチーフとなっているが、実際の童謡の意味とは関係の無い独自解釈となっている。「童謡」という共通点がありながらも、郷土の歴史、黄泉国、臓器売買、都市伝説、化学兵器といった具合に扱われる題材は多岐に渡り、発想力がかなり柔軟である事が伺える。「2人の王子〜月の砂漠〜」のラストがよく解らないという意見をネット上でよく見掛けるが、これは化学薬品の影響で体が崩れ、駱駝の様な醜い姿になってしまった人間の絵をハッキリ描く訳にはいかなかった事による弊害であろう。本来ならば好美のぼる(YOSHIMI NOBORU)の「にくしみ(NIKUSHIMI)」に登場する谷村ルリ(TANIMURA RURI)の様な姿の人物が描かれる筈だったに違いない。個人的に、一番リアリティがあって怖いと思った話は「暗闇からの使者」。

 「呪われた心霊ゲーム(NOROWARETA SINREI Game)」 牧原若菜(MAKIHARA WAKANA)他・・・・・2008年に発表されたホラー短編に描き下ろしを加えた、6人の作家によるホラーアンソロジーコミック。2008年12月31日発行。
 「わら人形ショッピング(WARA-NINGYOU Shopping)」は牧原若菜(MAKIHARA WAKANA)による描き下ろし作品。好きな幼馴染みの樹(ITUKI)に対して素直になれないかな(KANA)は、樹が可愛い転校生の宮内清香(MIYAUCHI KIYOKA)と仲良くしている姿を見てストレスが溜まり、癒しグッズを購入するが、それは何とわら人形だった。以後、わら人形に釘を打ち込む事で本当にストレスが解消されたかなは、その行為に嵌っていく…。
 「親指の殺意(OYAYUBI NO SATSUI)」は「モバフラ」2008年8月5日配信号に掲載された栖川マキ(SUGAWA MAKI)の作品。沙奈(SANA)が新しく買ったケータイで写真を撮ると、何故か人物の体の一部が歪んで写り、その人物は歪んで写った所をケガしてしまう。更に、その写真を転送する度に歪みが広がり、人物が受ける被害も大きくなってしまう事を知った沙奈は恐ろしくなり、彼氏の尚輝(NAOKI)に助けを求めようとするが、丁度その時尚輝は隣のクラスの女子と浮気をしている最中だった。罵倒された沙奈は、ケータイで2人の写真を撮り、転送を繰り返す…。
 「欲しがる人(HOSHIGARU HITO)」は「ちゃおデラックス2008年夏の超大増刊号」に掲載されたみづほ梨乃(MIDUHO RINO)の作品。ミク(MIKU)の趣味は、欲しい物を雑誌から切り抜いてスクラップする事。ある日こっとう品屋で買った黒い箱にキリヌキを入れると、そのキリヌキの品を母や父が買って来てくれる様になり、物には不自由しなくなったミク。一度は自分に告白してくれた久川(HISAKAWA)が他の女子と付き合っている姿を見て、久川を自分の物にする為に彼の写真を黒い箱に入れるが、実はその頃、久川は既に事故で死んでいたのだった…。
 「呪い画像(NOROI GAZOU)」は「モバフラ」2008年8月20日配信号に掲載された坂本勲(SAKAMOTO ISAO)の作品。ちひろ(CHIHIRO)の携帯に、中学時代の友人だったアコ(AKO)から助けを求める電話と共に写真が送られてくるが、翌日アコは飛び下り自殺してしまう。その写真はアコが虐めていた女生徒が飛び下り自殺する直前の物であり、その写真が送られてきた者は、皆同じ様に校舎の屋上から飛び下り自殺してしまうのだ。助かる為には1週間以内にその写真を他の誰かに送らなければならないのだが、ちひろの友達は皆自分が巻き添えにされたくない為に携帯電話の番号を変え、ちひろの事を避ける様になってしまう。そしてとうとう明日が1週間目という日の夜を迎える…。
 「冷たい教室(TSUMETAI KYOUSHITSU)」は清水まみ(SHIMIZU MAMI)による描き下ろし作品。雪の中、学校に忘れた宿題を取りに行ったなおみ(NAOMI)は、誰も居ない教室で、こずえ(KOZUE)がイジメられた仕返しをしようとしている所に出会す。その相手が自分である事を知ったなおみは逃げ出すが、とうとうこずえに捕まってしまい、ようやく忘れていた記憶を思い出す。
 「親友ごっこ(SHINYUU GOKKO)」は「ちゃおデラックス2008年夏の超大増刊号」に掲載された姫川きらら(HIMEKAWA KIRARA)の作品。新しい学校に転校して来たばかりの綾峰あんじ(AYAMINE ANJI)は、隣の大きな家に住む体の弱い少女・千夜(CHIYO)と友達になる。しかし転校して来てクラスに馴染み始めたばかりのあんじは、同じクラスの友達と遊ぶ事を優先させてしまい、唯1人の親友を失う事を恐れた千夜は、あんじを殺して自分も死のうとする。
 どの作家も絵柄が非常に可愛らしいので、怖いと思えるのかどうか最初は疑問に思えてしまうのだが、可愛いキャラが異常な行動を取る事によるギャップや、悲しさ・苦しさ・恐れといった感情がよく伝わってくる点等、可愛い絵柄だからこその怖さという物もあって、この「ちゃおホラーコミックス」シリーズには独特の味わいがある様に思う。しかし可愛いキャラが悲惨な結末を迎えたり、虐めっ子等の憎まれ役に配される事が少々気の毒にも思えてしまう為、普通に平和な日常を描いた、同じ作者によるホラー漫画以外の作品も読んで安心したい気持ちも沸き起こってきますね。可愛さと怖さのギャップの激しさと言えば、やはり「欲しがる人」でしょうか。ラスト4Pが異様に怖い。「親指の殺意」や「呪い画像」の携帯の写真もかなり怖いです。


 ↑「にくしみ」・・・・・醜く産まれた為に、美しい者を憎む様になってしまった社長令嬢の物語。
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