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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画225【新刊/ホラー漫画(実話系廉価版)】



 今回の本は全て9/29に購入。4冊全て稲川淳二(INAGAWA JYUNJI)の怪談コミックであれば「稲川淳二」、リイド社のホラーコミックであれば「リイド社」で括る事も出来たのですが、稲川淳二以外の物が1冊、小池書店の物が1冊混じっている為、「実話系廉価版」という括りとなりました。
 単行本形式で発売されている稲川淳二の怪談コミックで私が所有している物は、リイド社の「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI)」1~7巻、角川書店の「コミック 稲川淳二の最新・超怖い話(Comic INAGAWA JYUNJI NO SAISHIN・CHOU KOWAI HANASHI)」1~3巻、ぶんか社の「稲川淳二の恐怖心霊がたり(INAGAWA JYUNJI NO KYOUFU SHINREI-GATARI)」の計11冊。あと未入手なのは「稲川淳二の最新・怖い話(INAGAWA JYUNJI NO SAISHIN・KOWAI HANASHI)」だけだと思うのですが、仮にこれを入手したとしても、雑誌上で発表され未だ単行本化されていない物や、廉価版のコンビニコミックで描き下ろされた物に関しては、その全容が把握し切れない為、どんな作品があるのか非常に気になって仕方がありません。それで今回コンビニを何軒か回って、見掛けた物を色々買って来た訳なのですが、基本店頭に並んでいるのは一定期間だけで、読み捨てにされる雑誌に近い存在だと思っていたコンビニコミックが、第二刷・第三刷と再版される事があるという事を、今回初めて知りました。「こんなに新刊が出ていたのか!」と驚き、喜々として次々に買っていたら、その殆どは再版だったと言う…。まぁ傑作選以外は全て知らない作品ばかりだったので、別に構わないのですが、「コンビニコミックも全種揃えよう」とか考え出すと、ちょっと混乱してしまいそうな気がします。

 ただ1つ残念だったのは、稲川淳二の怪談の中に、七三一部隊の話があった事です。七三一部隊の正式名称は関東軍防疫給水部、別名石井部隊と言って、戦時中に実在していた軍組織ですが、この部隊が様々な残虐な人体実験を行っていたと言われている事に関しては、実際に「あった」事を証明する確たる証拠も無く、証拠とされる写真や証言に関しても、偽物である事が指摘されていたり裏付けが取れていなかったり等、現在に於いてはかなり疑わしいとされているにも関わらず…。「彼岸島(HIGAN-JIMA)」の五十嵐(IGARASHI)部隊の様に、飽くまでフィクションとして描かれているのであれば、刺激的で面白い題材である事は確かなので、許容しても良いと思うのですが、これを「事実」として広報する事には、やはり問題があると私は思います。
 私は稲川淳二も稲川淳二の怪談も好きですし、怪談の大家である事に敬意を表して、「実話」とされている怪談に関しては全て信じる方向で接してきたのですが、残念ながらこの「七三一部隊」を実話として取り上げてしまったが為に、他の多くのタレント霊能者同様、眉唾と捉えざるを得なくなってしまいました。まぁフィクションとしてはこれからも楽しませて貰おうと思ってはいますが…。とにかく、残念です。

 「実話 マジで怖~い話 ~恐怖の放課後~(JITSUWA MAJI DE KOWA~I HANASHI ~KYOUFU NO HOUKAGO~)」
 リイド社 SPコミックス SP Pocket。2004年?月?日初版第1刷発行(2004年7月9日発売)。1994年~1996年発行の単行本及び「恐怖の館DX」にて発表された、読者投稿による実話怪談を作品化したホラー短編集。

 「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 激恐傑作選(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI GEKIKOWA KESSAKU-SEN)」 稲川淳二
 リイド社 SPコミックス SP Pocket WIDE。2008年?月?日初版第1刷発行(2008年5月7日発売)。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集。1998年~2002年に雑誌上及び廉価版コミック上で発表された10人の作家による12本の漫画と、怪談2本を収録したコンビニ販売用の廉価版コミック。

 第一話「マーが鳴いている…(MA- GA NAITEIRU…)」は掲載誌及び掲載時期不明、桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。小学二年生の時に、両親・姉・飼い猫の4人+1匹の家族で、洋風の古い家に引っ越して来たN君。毎晩何処からともなく聞こえてくる鳴き声を、最初は飼い猫のマーだと思っていたのだが、後に人間の赤ん坊の声だと気付き、階段裏の納戸の奥を調べてみると、そこには…。
 第二話「焼きつけられた情景(YAKITSUKERARETA JYOUKEI)」は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された河崎千(KAWASAKI SEN)の作品。北海道のビジネスホテルに泊まった稲川が深夜に見た、大勢の人から見下ろされ、眩しい光を当てられるという謎の光景。翌朝ホテルの外に病院がある事に気付き、この場所もかつて病院敷地内だった事を知った稲川は、恐らく自分の泊まった部屋が手術室だったのではないかという結論に至る。
 第三話「幽霊がついてきた(YUUREI GA TSUITEKITA)」は掲載誌及び掲載時期不明、黒百合姫(KUROYURIHIME)の作品。鬼怒川へロケに行った帰り、車を運転していたカメラマンのK君の様子がおかしくなり、無人の料金所を越えた所で、一台も対向車も居ない奇妙な道へと迷い込んでしまう。その後稲川の許へと着物の女性が現れる様になり、更に後につのだじろう(TSUNODA JIROU)から見せられた心霊写真に、あの女性の霊が…。
 第四話「赤いぽっくり(AKAI POKKURI)」は掲載誌及び掲載時期不明、高井みお(TAKAI MIO)の作品。戦後四国で教師をしていたAは、近所に住む美しい少女・祥子(SHOUKO)と知り合い、恋仲になる。人目を忍んで夜Aの部屋に現れた祥子、そして次の日の夜、祥子の部屋へ忍んで行ったA。しかし当の祥子は、その二晩の出来事を全く知らない様子。ではあの祥子は一体…?
 「稲川淳二のすご~く恐い話」では、この本では漫画化されていない怪談2本を紹介。[『イロハ坂』祟りの細道(『IROHA-ZAKA』TATARI NO HOSOMICHI)]は、神津島(KOUDU-SHIMA)のイロハ坂と呼ばれる、事故が多発している坂道で起こった怪奇体験談。[渋谷松濤の豪邸(SHIBUYA SHOUTOU NO GOUTEI)]は、持ち主不明の屋敷でのロケ時に起こった出来事。稲川淳二の語り口がそのまま文章化されている。
 第五話「墜落現場の幽霊(TSUIRAKU-GENBA NO YUUREI)」は「ホラーウーピー」1999年秋号に掲載された桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。航空機墜落事故の取材に行ったディレクターが、誰かにシャツを引っ張られて転ぶが、周りの者は皆彼の周囲には誰も居なかったと言う。家に帰った後、風も無い室内で、洗濯して干してある自分のシャツだけが何故かはためき、そして…。
 第六話「見つけた(MITSUKETA)」は掲載誌及び掲載時期不明、枝松亜紀(EDAMATSU AKI)の作品。修学旅行で寺に泊まった少年が、寒さで夜中に目が覚め、1人で部屋から随分離れたトイレへと向かった。用を足している最中にふと見ると、奥の仕切り板の向こう側に屈み込んでいる男が居て、どうやら血を吐いているらしい様子。恐ろしくなった彼が急いで部屋に戻ると、そこへ…。
 第七話「お母ちゃんおんぶ(OKAA-CHAN ONBU)」は「ホラーウーピー」1998年10月号に掲載された瀬河美紀(SEGAWA MIKI)の作品。自分が呼んだ所為で、道路へ飛び出して来た娘が事故に遭って死んでしまった事に、責任を感じて精神を病んでしまった母。そんな妻と、まだ手の掛かる幼い息子の世話に疲れた父は、ある日とうとう妻を殺して埋めてしまう。最近奥さんを見掛けなくなったと噂する近所の人々に対し、お母ちゃんは居ると言う息子だったが…。
 第八話「オルゴールの伝言(Orgel NO DENGON)」は掲載誌及び掲載時期不明、鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。夜中に突然鳴り出し、スイッチを切っても鳴り続けているオルゴール。そのオルゴールをくれた贈り主はその頃難病で入院していたが、後に亡くなり、葬儀に出ていた最中の留守番電話にも、そのオルゴールの曲が入っていた。
 第九話「六本木に纏わる怪異(ROPPONGI NI MATSUWARU KAII)」は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された速瀬みさき(HAYASE MISAKI)の作品。六本木で水商売をしていた学生の頃、芋洗坂(IMOARAIZAKA)でタクシーに相乗りさせた女性が消えてしまったという話を聞いた稲川。それからずっと後になって、取材で六本木に行った際に、窓の閉まったタクシーから身を乗り出す不自然な女の姿を見掛けた稲川は、その場所が芋洗坂であった事に気付く。
 第十話「動物怪異譚(DOUBUTSU KAII-TAN)」は掲載誌及び掲載時期不明、野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。稲川が子供の頃、従祖母さんから聞いたという踊る猫の話と、そういった話を一切信じていなかった父が信じる切っ掛けとなった、狐に化かされて死んでしまった男の話を紹介。
 第十一話「続・動物怪異譚(ZOKU・DOUBUTSU KAII-TAN)」は掲載誌及び掲載時期不明、野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。ある田舎の村で寝たきりだったお爺さんが、今日は隣村に出掛けて来た、今日は祭りを見に行って来たなどと話し出し、当初家族は誰も信じていなかったのだが、話は山向こうの村で子供を殺したとか盗み食いをしたといった具合にエスカレートしていき、どうやらそれ等の話は全て事実であるらしい事が解る。お爺さんには何かが取り憑いているのだろうか…?
 第十二話「二〇七号室の怪(207-GOUSHITSU NO KAI)」は掲載誌及び掲載時期不明、琴川彩(KOTOKAWA AYA)の作品。ベテラン師長がまだ新人看護師だった頃、夜何度もナースコールを鳴らして、「顔の潰れた女が私を呼びに来るので、部屋を替えて欲しい」と訴える患者が居た。余りに何度もそれが続き、怯え方が普通ではないので、ナースセンターに来る様に促すが、実はその患者は、既に昨夜亡くなっていたのだった。

 全て過去に単行本や廉価版コミックで一度発表されている作品なので、私が以前読んだ事がある作品も全12作品中6本あったのですが、流石に「傑作選」と銘打たれているだけあって、どの作品も全て絵・内容共に非常にレベルが高く、満足のいく1冊となっています。個人的には特に「マーが鳴いている…」の地下室の光景が一番恐ろしかったのですが、皿に女性の姿が重なっている心霊写真、墜落現場の幽霊、仕切り板の向こう側で血を吐いているらしき男の姿、居ない筈なのに居る女、死んだ男の周囲に無数の足跡が付いている異様な光景、顔の潰れた女等、どれも非常に恐ろしい。過去の出来事を描いた物や、恐ろしさよりも悲しさや不思議さの方が主体となっている話に関しては、過ぎ去った過去の情景に思いを馳せる様な、懐かしさや情緒的な雰囲気が強く感じられました。
 再録故に、「墜落事故現場の霊」が「墜落現場の幽霊」、「おかあちゃん、おんぶ」が「お母ちゃんおんぶ」、「207号室の患者」が「二〇七号室の怪」といった具合に、タイトルやセリフが初出時とは変更されている部分もあり、初出時からの年月の経過を考慮して、墜落事故があった時期についてのセリフが「十何年か前に」から「ずいぶん前に」に変更されているといった納得のいく変更もある一方で、まだ「看護師」という言葉が使われていなかった昔の話であるにも関わらず、「看護婦」を「看護師」、「婦長」を「師長」に変更するといった不自然な変更箇所も見受けられたのは、少々残念に思われました。


 「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 ~ねんねこ坂~(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI ~NENNEKO-ZAKA~)」 稲川淳二
 リイド社 SPコミックス SP Pocket WIDE。2009年?月?日初版第1刷発行(2009年6月8日発売)。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集で、2008年に雑誌上で発表された作品に描き下ろしを加えた11人の作家による13本の漫画と、怪談2本を収録したコンビニ販売用の廉価版コミック。

 第1話「ねんねこ坂(NENNEKO-ZAKA)」は掲載誌及び掲載時期不明、桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。静岡に在る〝ねんねこ坂〟と呼ばれる坂道では、昔ヤクザ者の亭主が子供もろとも女房を坂から突き落とし、以来女の悲鳴と赤子の泣き声が聞こえる様になったと言う。千葉に在る廃墟での撮影帰りに、全く同じ名前の〝ねんねこ坂〟を通った稲川は、不自然な場所に公衆電話が在った事から、かつてこの坂道でカップルが体験した恐ろしい出来事について知る。
 第2話「かくれんぼ(KAKURENBO)」は掲載誌及び掲載時期不明、鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。結婚が決まり、相手の男性と共に、山梨のおじさんの家に報告がてら遊びに行ったA子。分教場に立ち寄り、2人でかくれんぼを始めた所、子供の声がした為、誰かが自分達の遊びに加わってきたのだと思い捜し始めるが…。
 第3話「北国の漁村(KITAGUNI NO GYOSON)」は掲載誌及び掲載時期不明、野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。青森の漁村に立ち寄ったカメラマンが、雨風を凌ぐ為に食堂に入った所、店の者は誰も居らず、漁師が1人で勝手に酒を飲んでいた。しばしの談笑の後、「後で家に来い」と言って漁師は帰って行くが、そこへ現れた食堂の主人によると、漁師は何年も前に漁に出たまま帰らぬ人となっていたのだと言う。
 「特別企画 稲川淳二のすご~く怖い話 傑作選」では、この本では漫画化されていない怪談2本を紹介。「仙台坂ミステリー(SENDAI-ZAKA Mystery)」は、仙台坂に住んでいた二枚目スターのT宅と、付近の鐘突堂や寺に纏わる怪異譚。田舎の貸し農家へ遊びに行った大学時代の思い出を語った「足音だけの子供のイタズラ描き(ASHIOTO DAKE NO KODOMO NO ITAZURA-GAKI)」は、瀧清流(TAKI SEIRU)によって漫画化されている。
 第4話「飛び込む男(TOBIKOMU OTOKO)」は掲載誌及び掲載時期不明、黒百合姫(KUROYURIHIME)の作品。ホームから這い上がろうとする不気味な男の姿を目撃したKは、2ヶ月前にもホームから電車への飛び込み自殺を目撃した事を思い出し、陰鬱な気分に。そんなKの前にホームの男が再び現れ、Kは飛び込み自殺をした男とホームの男が同一人物である事に気付き、更にその男が中学時代の同級生のIだった事を知る。
 第5話「ベッドで笑う女(Bed DE WARAU ONNA)」は掲載誌及び掲載時期不明、河原達弘(KAWAHARA TATSUHIRO)の作品。河童好きで有名な芸能人のK助が、かつての浮気相手だった人妻が毎晩ベッドに潜り込んでくるという夢を見て、妻に後ろめたさを感じながらも、その余韻を楽しんでいたが、ある時ふとその人妻が既に死んでいた事を思い出し、途端に恐ろしくなり始める。
 第6話「秘密の願い(HIMITSU NO NEGAI)」は掲載誌及び掲載時期不明、高井みお(TAKAI MIO)の作品。クラス会で久し振りに会い、後日中学時代にハイキングに行った公園に遊びに行った川口(KAWAGUCHI)・松本(MATSUMOTO)・佐藤(SATOU)・塚田(TSUKADA)の4人。近くの神社には、当時願い事を書いて入れた箱がまだ置かれており、興味本位で箱を開け、高校時代に死んだ上木(UEKI)の願い事を探して見た所、そこには川口の事が好きだと書かれていた。以後、川口は上木の霊に纏わり付かれる様になってしまう。
 第7話「ウナギとガイコツ(UNAGI TO GAIKOTSU)」は掲載誌及び掲載時期不明、原田亜香音(HARADA AKANE)の作品。ウナギが苦手で食べられないと言うO。子供の頃に目撃したある恐ろしい光景が、その理由であった。海中に沈んでいた漁師の骸骨が突然海面に浮き上がり、その中から…。
 第8話「劇団のタマコ(GEKIDAN NO TAMAKO)」は掲載誌及び掲載時期不明、琴川彩(KOTOKAWA AYA)の作品。九州での公演時、劇団の新人のタマコは、徹夜でトランプ博打に興じる他の劇団員達に付き合い切れず、大御所の岡本(OKAMOTO)の部屋を借りて休ませて貰う事にする。しかし部屋には岡本の物とは違う香水の香りが漂い、押し入れから布団を出そうとすると、何故かその布団は重く、そして…。
 第9話「そして俺は死んだ(SOSHITE ORE HA SHINDA)」は掲載誌及び掲載時期不明、櫻井そうし(SAKURAI SOUSHI)の作品。海へ旅行に出掛けた専門学校の学生達。夜の浜辺で花火や怪談をして盛り上がっていた所、見知らぬ男が来て、自分が海で溺れた時の話をして去って行った。その夜は嵐となり、翌日浜に死体が打ち上げられるが、それは…。
 第10話「パチンコ店の独身寮(PACHINKO-TEN NO DOKUSHIN-RYOU)」は掲載誌及び掲載時期不明、うえやま洋介犬(UEYAMA YOUSUKE)の作品。手違いで独身寮に空き部屋が無いとの事で、まだ荷物が置かれている、行方不明になったオカノ(OKANO)の部屋を一時宛がわれる事になった、パチンコ屋の店員N。そのオカノらしき人物を何度か見掛けた為、帰って来たのかと思いきや、オカノは既に1ヶ月も前に殺されていたのだった。
 第11話「岡山の霊能者(OKAYAMA NO REINOUSHA)」は掲載誌及び掲載時期不明、野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。医者でもないのに何人もの患者を治したとの事で、人々から神様の様に慕われている岡山の霊能者。番組のロケで彼女に会いに行った稲川は、泊まったホテルの部屋に充満する異様な線香の匂いに悩まされる。翌日再び霊能者に会いに行った所、自分が訪ねて行ったのだと彼女は言うが…。
 第12話「K製作所(K-SEISAKUJYO)」は掲載誌及び掲載時期不明、鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。デザイン工房のK製作所にて、1人で遅くまで居残って仕事をしていた榎本(ENOMOTO)が、電話で前田(MAEDA)を呼び出した後、首を吊って死亡。その年の暮れ、忘れた図面を取りに戻った前田が電話で沢本(SAWAMOTO)を呼び出し、真っ暗なスタジオ内で沢本は何者かに襲われ首を絞められる。この時は前田も沢本も無事だったのだが、後に同じ様に電話で前田に呼び出された沢本がK製作所のスタジオに行ってみると、前田は首を吊って死んでいた。
 第13話「七三一部隊(NANA-SAN-ICHI-BUTAI)」は掲載誌及び掲載時期不明、風忍(KAZE SHINOBU)&ダイナミックプロ(Dynamic-Pro)の作品。新宿のTハイツ建設工事現場に於いて見付かった大量の人骨は、戦時中に七三一部隊によって行われた、数々の非人道的な人体実験による犠牲者達の物であった。戦後も誰1人として裁かれなかった元部隊員達は、その経験を活かして、有名大学や有名病院・製薬会社等のトップとして収まっていると言う…。

 ページ数は10P~40Pと軽い物から読み応えのある物まで幅広く取り揃え、怪談の舞台となる土地も静岡・山梨・青森・東京・福岡・岡山と日本全国に跨り、更に正統派ホラーから、超自然現象ではないが怖い話、解ってみればホラーでも何でもないギャグっぽい内容の物、ミステリー仕立ての物やドキュメンタリーまで、かなりバラエティに富んだ内容となっている。「ねんねこ坂」「飛び込む男」「そして俺は死んだ」「K製作所」は小山田いく(OYAMADA IKU)、「岡山の霊能者」は原田亜香音(HARADA AKANE)によっても漫画化されており、小山田いく版の「飛び込む男」では、電車に飛び込んだ男がKの同級生のIだとは明言されていない点、「岡山の霊能者」の原田亜香音版[部屋に漂う線香の香り(HEYA NI TADAYOU SENKOU NO KAORI)]では、左手に気を付ける様に忠告され、実際に左手に怪我をしてしまうエピソードが描かれているといった具合に、作者毎に異なるバリエーションを読み比べてみるのも面白い。
 個人的には、途中まで「これは怪談ではなく人為的に起こされた事件だろう」と思いながら読み進めていたものの、最後の最後で訳が解らなくなる「K製作所」が、読み応えもあって一番面白いと思ったのだが、創作系ホラー漫画の様に、先のストーリーが非常に気になり読み進めてしまう「秘密の願い」や、正統派怪談系の「ねんねこ坂」、別の意味でのどんでん返しがある「劇団のタマコ」等、絵・内容共にどれもレベルが高く、非常に満足のいく1冊だと言えるだろう。
 唯一残念だったのは、現在に於いてはほぼ否定されている七三一部隊の人体実験が「事実」として描かれていた事。元部隊員のNが後に作った製薬会社が、とある薬品により多くの人を不幸にした…と、この部分だけなら純粋な社会批判であった所が、「戦時中に残虐な人体実験をしておきながら裁かれなかった、その報いを受けたのだ」と無理矢理怪談にこじつけてしまった為に、一気に胡散臭い話になってしまった。時代遅れの自虐史観もそろそろ止めにしなければ、何処でどんな弊害を齎すか解らないという例の1つですね。


 「稲川淳二の超こわい話 地獄への招待(INAGAWA JYUNJI NO CHOU KOWAI HANASHI JIGOKU HE NO SHOUTAI)」 稲川淳二
 小池書院 キングシリーズ 漫画スーパーワイド。2011年8月4日初版第1刷発行(2011年7月25日発売)。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画を中心に、1999年~20??年に雑誌上及び廉価版コミック上で発表された9人の作家による10本のホラー漫画を収録した、コンビニ販売用の廉価版コミック。

 第1話「オルゴールの伝言(Orgel NO DENGON)」は掲載誌及び掲載時期不明、鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。夜中に突然鳴り出し、スイッチを切っても鳴り続けているオルゴール。そのオルゴールをくれた贈り主はその頃難病で入院していたが、後に亡くなり、葬儀に出ていた最中の留守番電話にも、そのオルゴールの曲が入っていた。
 第2話「夜窓人面浮遊考(YASOU-JINMEN-FUYUU-KOU)」は掲載誌及び掲載時期不明、カネコヒトミ(KANEKO HITOMI)の作品。稲川がレギュラー出演していたTV番組で紹介された、部屋の窓の向こう側に4つの顔が浮かんだ心霊写真。番組終了後、次のロケの為に泊まった宿の部屋は、正にその心霊写真が撮られた部屋であった。
 第3話「東北地方の大学生のアパート(TOUHOKU-CHIHOU NO DAIGAKUSEI NO Apart)」は「ザ・ホラー」1999年12月号に掲載されたカネコヒトミ(KANEKO HITOMI)の作品。一人暮らしのアパートの部屋で、掃除の最中に長い女の髪やヘアピンを見付けた学生。彼女など居ないにも関わらず、部屋に女の人影を見掛けたと友人に言われた学生は、友人の協力でお札を部屋中に貼るが、夜寝ている時に周囲を何者かが這いずり回る物音を聞いた後、起きて電気を点けてみると、お札が全て剥がされていた。
 第4話「タクシーの窓を叩く女(Taxi NO MADO WO TATAKU ONNA)」は掲載誌及び掲載時期不明、燎上さや(RYOUGAMI SAYA)の作品。映画のロケ現場に遅れて来たタクシーと、それに乗っていた2人の俳優。顔色が悪く震えも止まらない彼等3人が、ここへ来る途中に出遭った恐怖の出来事とは?
 第5話「森末さんから貰った話(MORISUE-SAN KARA MORATTA HANASHI)」は掲載誌及び掲載時期不明、黒薔薇ちるる(KUROBARA CHIRURU)の作品。稲川淳二が、元金メダリストのタレント・森末慎二(MORISUE SHINJI)から聞いたと言う不思議な話。山奥のコテージへ出掛けた4人の女子高生の内の1人・姿子(SHINAKO)は、旅先で彼氏の高崎(TAKASAKI)と落ち合う約束をしていたが、コテージへ着いた夜、高崎が事故で死んだと知らされる。
 「409号室の怪(409-GOUSHITSU NO KAI)」は掲載誌及び掲載時期不明、愛田真夕美(AIDA MAYUMI)の作品。夫の会社の社宅へ引っ越して来て、町内会役員にも立候補するなど積極的に周囲に馴染もうと努力していた主婦の谷原ひかり(TANIHARA HIKARI)。しかし空き部屋の筈の409号室から聞こえてくる物音や泣き声を、他の主婦仲間達は誰1人聞いていないと言い、やがてひかりは孤立していく。
 「黒振袖(KURO-FURISODE)」は「スーパーパチスロ777」2008年?月号増刊「まんが 女の仕返し ホラー&サスペンス」vol.1に掲載された黒川晋(KUROKAWA SHIN)の作品。昭和の初め頃、京都の大きな木綿問屋・冨松(TOMIMATSU)には、華子(HANAKO)と静代(SHIZUYO)という美しい姉妹が居た。姉の華子が婿養子を取って冨松を継ぐ事になり、婚礼衣装の黒振袖を作っていよいよ式も間近という矢先、華子は病に倒れてしまう。
 「痕跡(KIZUATO)」は掲載誌及び掲載時期不明、寝猫(NENEKO)の作品。買い物、旅行、美食、乱交パーティ…様々な放蕩三昧の果て、退屈した金持ちの奥様方が最後に辿り着いたのは、死のスリルを味わう自殺ごっこであった。
 「飽食の末路(HOUSHOKU NO MATSURO)」は掲載誌及び掲載時期不明、関よしみ(SEKI YOSHIMI)の作品。食い道楽で食べる事には一切妥協しない夫は、毎日手の込んだ料理を妻の亜由美(AYUMI)に作らせ、糖尿病を患うと、亜由美の所為だと逆ギレ。食事療法も運動も長続きせず、イライラが募って、体を心配する亜由美を殺そうとまでするが…。
 「山神霊異記(YAMAGAMI RYOUIKI)」は「あなたが体験した怖い話」????年?月号に掲載された榎本由美(ENOMOTO YUMI)の作品。4年間のオーストラリア留学から帰って来た聖子(MINAKO)は、姉妹の様に育った幼馴染みの涼子(RYOUKO)が死んだと聞かされ、何かを隠しているらしき村人達の様子から、涼子の死の原因を探り始める。

 全10作品中5本が稲川淳二原作作品、5本がオリジナル作品となっており、稲川怪談側は全て心霊現象を扱った物、オリジナル側は霊が登場しない「痕跡」「飽食の末路」を含め、全て「人間が恐ろしい」と思わせる様な内容で、自分の行いに対する報いを受ける様なラストが目立つといった特徴がある。殆ど全ての作品が他誌からの再録であったり、何故実話系怪談とオリジナルのホラー作品を同時収録したのか等、今一つ狙いが解りにくい所もあるのだが、稲川怪談側に「森末さんから貰った話」の様にストーリー性のある物が含まれている事や、オリジナル作品が5作品共「実際にあった話」だと言われても違和感が無い程に現実味のある話ばかりである事等から、全体的な統一感は有る様に思われる。
 純粋に怪談として怖い物は「夜窓人面浮遊考」「東北地方の大学生のアパート」「タクシーの窓を叩く女」「黒振袖」の4本、「森末さんから貰った話」「409号室の怪」「痕跡」「飽食の末路」は、自分でも気付かぬ内に恐怖の渦中に身を置いていて、逃げたいのに逃げる事が出来ないといった「翻弄される恐怖」を描いた物、そして「オルゴールの伝言」と「山神霊異記」は、恐ろしさよりも寂しさや悲しさの方を強く感じさせる内容となっている。好きな作品は「森末さんから貰った話」「409号室の怪」「痕跡」の3本で、キャラの魅力や読み応え等の点で、どちらかと言うとオリジナル作品の方に個人的な思い入れは強い。
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デザインが変わりましたね
 同時期にこちらも替えたのですが、結局慣れ親しんだデザインの色違いで収まってしまいました。こちらは明るくなって見やすくなった印象です。前のも味がありましたけどね。

 稲川淳二の漫画は、自分から進んで読んだものはありません。伊藤潤二と違って、ストーリーテラーの彼のお話の怖さが、漫画という表現で伝わるのかどうかが懐疑的だったからです。

 この感想で興味を抱きました、機会があれば読んでみたいですね。七三一部隊に関してはそういった取り上げ方をされているのは残念ですね。舞台は実在しましたが、人体実験の下りは日本の小説家が作りだしたデマなんですけどねぇ。
甘茶 URL 2011/10/07(Fri)20:59:46 編集
実話系怪談は…
 甘茶さん、コメント有難うございます。稲川淳二の怪談コミックに限らず、実話系怪談全般に関して、私も少し前までは意識的に敬遠しており、安易に実話系に走る事は、作家側にとっては創作能力の、読者側にとってはの想像(共感)能力の欠如と言えるのではないかと、今でも少なからず否定的に捉えている部分が無いとは言えないのですが…。ただ、このジャンルで長く活躍している作家さんの作品は、内容も洗練されていて安心して読む事が出来ますし、元になった怪談を知っている場合は比較して楽しんだり、知らない場合は元になった怪談に興味を持つきっかけになるなど、色々な楽しみ方が出来ると思いますので、機会があれば是非お奨めしたい所です。

 ブログのレイアウトに関しては、今回特に文章が諄く長くなってしまった事もあって、より読み易い物をと模索している所です。気分も変わって良いですし、これからも時々変えていこうかと思っています。
manken99 2011/10/08(Sat)02:18:43 編集
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