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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画94【古本/ホラー漫画】



 今回の本は12/3・12/6・12/8に購入及び入手した物。「入手」は12/8に友人から貰った「生き人形(IKI-NINGYOU)」と「永久保怪談 恐怖耳袋(NAGAKUBO KAIDAN KYOUFU MIMIBUKURO)」の2册です。

 「魔女のいる教室(MAJYO NO IRU KYOUSHITSU)」 大橋薫(OOHASHI KAORU)・・・・・1996
〜1997年に発表されたホラー作品を5本収録した短編集。1998年2月13日発行。
 表題作の「魔女のいる教室」は「別冊フレンド」1997年5月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。転校初日に男子生徒の飛び降り自殺を目撃してしまった田辺マリ(TANABE MARI)は、同じクラスの朱美(AKEMI)から、死亡した男子生徒・加藤(KATOU)は実は自殺ではなく、魔女に呪われて死んでしまったのだと聞かされる。その「魔女」がクラスでも目立たない女生徒・雪奈(YUKINA)であり、唯一の目撃者である自分もいずれ呪い殺されると思い込んでしまったマリは、「殺される前に殺してやる」と決意するが…。
 「メビウスの夜(Mebius NO YORU)」は「別冊フレンド」1997年1月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。虐められて、旧校舎に閉じ込められてしまった吉川麻央(YOSHIKAWA MAO)。委員長の京(KYOU)が夜中に旧校舎へ向かうと、丁度そこに虐めっ子達も来ており、旧校舎に住み着いていた殺人鬼によって皆は閉じ込められ、命を狙われる羽目になってしまう。虐められっ子・吉川の意外な活躍に嫉妬した京は、吉川を囮にして、殺人鬼が吉川を襲っている間に皆を助け、手柄を一人占めしようとするが…。
 「満月が見ていた(MANGETSU GA MITEITA)」は「月刊少女フレンド」1996年6月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。亜子(AKO)・早織(SAORI)・ユキ(YUKI)・友美(TOMOMI)の4人は満月の夜に空き家に忍び込み、そこで自分達が過去に犯した罪を告白し合う事で、一生の絆を深めようと考える。亜子・ユキ・友美の3人が告白し終えた後、実は彼女達が犯した全ての罪の原因を作っていた早織だけが、「何も悪い事なんかしていない」と言い張り…。
 「神の手(KAMI NO TE)」は「月刊少女フレンド」1996年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。文芸部に在籍するも、今まで作品を1つも発表した事が無かった井上カナ(INOUE KANA)。引き蘢りの友人・ちひろ(CHIHIRO)の存在に優越感を持っていたカナだったが、ちひろが書いた童話の出来の良さに嫉妬して悪態を吐いた挙句、その童話を盗作して発表し、童話作家としてデビューまでしてしまう。その事をちひろに知られて逆ギレするカナ。しかし自分がちひろの中で絶対的な「神」として君臨し続けていた事でちひろを追い詰めていた事を悟ったカナは反省し、全ての罪を告白して償おうとするが…。
 「暗闇(KURAYAMI)」は「デザート」1997年9月号増刊「サスペンス&ホラー特集号」に掲載。従兄弟の昌(MASA)の運転で、仲の良い友人達と貸し別荘にやって来た亜美(AMI)。近所の子供のいたずらに閉口するも、誰も子供の姿など見ていないと言い、亜美がやったのだと疑われてしまう。子供の頃この付近で亀裂に落ちた所を昌に助けられた経験がある亜美は、自分と昌にしか見えないその子供と接する内、忘れていた記憶を取り戻す。
 最後の「暗闇」以外は、4本全て学園物でバッドエンドという共通点があり、普段のキャラ達が皆活き活きと魅力的に描かれているだけに、却って鬱度がアップしてしまいそうな内容だ。短編にしてはどれも凝った設定と展開で、物語そのものには工夫があって面白いのだが、「魔女のいる教室」のマリと「メビウスの夜」の京は途中で「何故そういう考えに至るのか?」と疑問に思う程の心変わりを見せ、「満月が見ていた」の亜子と「神の手」のカナは元々意地の悪い性格をしているといった具合に、主人公への感情移入が少々しづらいのが難。

 「華麗なる恐怖シリーズ③ 犬姫御殿(KAREI NARU KYOUFU Series③ INUHIME GOTEN)」 まつざきあけみ(MATSUZAKI AKEMI)・・・・・「月刊ハロウィン」1986年1月号(創刊号)〜1990年9月号に連載された「華麗なる恐怖シリーズ」全42話を文庫本全5巻に纏めた物で、3巻目となるこの「犬姫御殿」には、1987年11月号〜1988年8月号に掲載された全8話を収録。2000年8月30日発行。
 「満月奇譚(MANGETSU KITAN)」は「月刊ハロウィン」1987年11月号に掲載。悪相に生まれついた為に悪行三昧の人生を送ってきた男が、心を入れ替える事を決意し、運勢の良い人相へと整形する「悪相(AKUSOU)」と、死んだ恋人が夜になると会いに来てくれるという怪談を聞いた資産家令嬢が、自分と夫には霊感が無い為、仮にどちらかが死んだらそれっきり会う事が出来ない事を嘆き、死ぬ前に屋敷内にある仕掛けを施す「幽霊(YUUREI)」、年下のハンサムな夫を持った妻が夫の浮気を疑い、満月の夜に夫が自分以外の美しい女性と仲睦まじく暮らしている10年後の幻を見る「三年目の浮気(SANNENME NO UWAKI)」の3本立て。
 「風花幻戯(KAZAHANA GENKI)」は「月刊ハロウィン」1987年12月号に掲載。明治末頃、奉公先のおかみさんやその家の子供達に虐められながらも、真面目に働いていた娘・おさと(OSATO)。ある時子供達がオオワシに襲われて死んでしまった事から、その責任を問われて村に居られなくなった彼女は、別の村で働き始めるが、愛しい相手・吉(KICHI)の事を想うと、何故か彼女の体に子供達がオオワシに襲われた時と同じ様な傷が出来るのだった。果たしてその理由とは?大雪の中、村に迷い込んで来た旅人を殺して金品を奪う村人達の話「ざしきわらし(ZASHIKIWARASHI)」との2本立て。
 表題作の「犬姫御殿」は「月刊ハロウィン」1988年1月号〜3月号に掲載。「犬神憑き」の犬姫様を取材する為にやって来た、編集者の宮川誠一(MIYAKAWA SEIICHI)と小説家の弓削一郎(YUGE ICHIROU)。村人に襲い掛かる野犬の群れを制し、数々のお告げで悩める人々を導く犬姫・綾(AYA)の事を、村人達は神の様に崇めるが、不信心者は次々と野犬に襲われて命を落とし、綾と恋仲の町長の息子・貞夫(SADAO)は「犬神様」の秘密を知った後、城内に仕掛けられた罠に嵌って行方不明となってしまう。貞夫を捜しに来た誠一も綾の父によって罠に嵌められ殺されそうになっていた所、老朽化した城が崩れ始め、城に仕掛けられた最後の「恐ろしい仕掛け」が作動して村中を襲う。
 「名残の雪(NAGORI NO YUKI)」は「月刊ハロウィン」1988年4月号に掲載。母が助けた鶴を売り飛ばした親不孝者の与ひょう(YOHYOU)に復讐するべく、娘を失った母鶴は人間を不幸にするという多くの小判を与ひょうの家に投げ込むが、仇を恩で返した形となり、結局は悪が栄えるという皮肉な話「鶴の恩返し(TSURU NO ONGAESHI)」と、凶悪犯に娘を殺され、人形を娘だと思い大事にしている大きな屋敷の未亡人を騙して、財産を奪おうと企む小悪党の末路を描いた「人形(NINGYOU)」、特産物の茗荷の所為で泥棒も盗んだ物を忘れてしまう為、絶対に盗みが成功しないと言われる「茗荷村(MYOUGA-MURA)」の3本立て。
 「真夜中の童話(MAYONAKA NO DOUWA)」は「月刊ハロウィン」1988年5月号に掲載。悪魔の様な姉からの酷い虐めに対し、自分の姿を童話の中の不幸なヒロインに重ね合わせ、王子様と結ばれるハッピーエンドを信じて耐え続ける童話作家の五百城火華子(IOKI YOUKO)。彼女は資産家令息の萬木(YURUGI)氏と婚約するが、その〝王子様〟は事もあろうに意地悪な姉の方を愛してしまい、彼女の童話は終わりを告げる。
 「ピーター・パン(Peter Pan)」は「月刊ハロウィン」1988年6月号に掲載。愛(ITSUMI)の両親は、娘の前でだけ夫婦仲が良い様に装っているが、その実父は浮気をし、母は毎日贅沢をして遊び歩き、互いに相手の死を願う程憎み合っていた。その事に心を傷めていた愛の前に、ある夜ピーター・パンが現れる。
 「けむりを吐かない煙突(KEMURI WO HAKANAI ENTOTSU)」は「月刊ハロウィン」1988年7月号に掲載。娘を連れて立派な屋敷へと引っ越して来た作家の南堂(NANDOU)。しかし娘のありさ(ARISA)はこの屋敷に「いやな予感」がすると言い、レンガで塗り固められた暖炉を酷く恐れるが…。タイトルは夢野久作(YUMENO KYUUSAKU)の小説に準え、内容は童話「三匹の子豚(SAN-BIKI NO KOBUTA)」に準えられている。
 「夜の向こう側(YORU NO MUKOUGAWA)」は「月刊ハロウィン」1988年8月号に掲載。列車事故で両足を切断してしまったバレリーナが、元足があった位置に残る実体の無い「生体エネルギーの足」を使って、自分をホームから突き落とした犯人を捜す話と、幻の犬を飼う少年の話「ぼくのリュウ(BOKU NO RYUU)」の2本立て。
 2本立てや3本立ての話が多く、全8話収録と言いつつ実質全14話。「風花幻戯」の様に1本目の話が殆どのページを占めている物もあり、各々のエピソードを膨らませて1話分に仕立て上げても良い様に思えるが、各ページに詰め込まれたコマ数や文章量の多さを見ても、物語を無理矢理水増ししてページを稼ぐ様な真似は許さないという、創作に対する真摯な姿勢が伺える様で好感が持てる。猟奇色の強い昔の探偵小説を彷佛とさせる様な、独特の味わいがある一郎と誠一のシリーズは14本中6本。このシリーズに限らずほぼ全般的に、発表時には既に遠い過去の時代だった昭和30年代を舞台としており、その時間的距離感の為もあってか、全体的に幻想的な雰囲気が漂っている。登場人物が皆非常に艶かしく、可憐な美少女も良いが、妖艶な美人タイプのキャラ(殆ど皆性格が悪い)も魅力的だ。「ぼくのリュウ」のまもる(MAMORU)少年と犬のリュウもとても可愛らしい。

 「華麗なる恐怖シリーズ④ 逢魔が刻(KAREI NARU KYOUFU Series④ OUMAGADOKI)」 まつざきあけみ(MATSUZAKI AKEMI)・・・・・「月刊ハロウィン」1986年1月号(創刊号)〜1990年9月号に連載された「華麗なる恐怖シリーズ」全42話を文庫本全5巻に纏めた物で、4巻目となるこの「逢魔が刻」には、1988年9月号〜1989年8月号に掲載された全7話を収録。2000年10月30日発行。
 表題作の「逢魔が刻」は「月刊ハロウィン」1988年9月号〜10月号に掲載。事故で大火傷を負い、全身マヒの上声まで出なくなってしまった夫・杲(AKIRA)。当初は愛する夫に献身的に仕えていた妻の美緒(MIO)だったが、事故後性格や好みが変わってしまった杲に対して、次第に不信感を抱く様になっていく。同じ頃、美緒にしつこく言い寄っていた杲の友人・勇司(YUUJI)が行方不明になったと聞いて、勇司が杲と入れ替わっているのではないかと疑う美緒だったが…。
 「闇の哄笑(YAMI NO KOUSHOU)」は「月刊ハロウィン」1988年11月号〜12月号に掲載。成績も容姿も悪く、おとなしくて何時も皆から虐められていた川田利子(KAWADA TOSHIKO)が、虐めを苦に自殺した。親友の茉莉(MARI)は、利子の母親から、生前利子が「学校に悪魔が三人いる」と零していた事を聞き、表立たぬ様に利子の事を苦しめていた二人に対して復讐を果たす。三人目は一体…?
 「黒いレクイエム(KUROI Requiem)」は「月刊ハロウィン」1989年1月号に掲載。五年前に託児所の火事で焼死した娘・里香(RIKA)の事が忘れられず、今も生きているかの様に幻の子育てをし続けている春子(HARUKO)。当時保母をしていた野村(NOMURA)が、火事の最中に里香を奪い去ったと考えた春子と妹の留美(RUMI)は、野村の家へと向かうが、そこで彼女達が見た物は…。
 「恋人たちの冬(KOIBITO-TACHI NO FUYU)」は「月刊ハロウィン」1989年2月号に掲載。心中する為白樺の林へ向かった2人が、先にそこで死んでいたアベックの死体を見て思い留まり、仲違いを始める「白樺心中(SHIRAKABA SHINJYUU)」と、女性ばかりを狙った連続殺人犯の仕業に見せ掛けて、望まぬ結婚相手を殺害しようとした男の話「切り裂きジャック(KIRISAKI Jack)」の2本立て。
 「五百旗頭家の怪(IOKIBE-KE NO KAI)」は「月刊ハロウィン」1989年3月号に掲載。五百旗頭家の跡継ぎに成り損なった達彦(TATSUHIKO)は、跡継ぎに選ばれた巴波(UZUMA)の事を憎み、「殺してやる」と息巻いて様々な嫌がらせを仕掛けてくる。しかし口が聞けず何時も頭巾で顔を隠している巴波には、数々の不審な点が…。
 「夢十夜(YUME JYUU-YA)」は「月刊ハロウィン」1989年4月号〜7月号に掲載された10本の短編オムニバス。第一夜は財産目当てで娘に言い寄る男を疑い試す母の話。第二夜は美人に生まれ変わった元ブスな女が、自分に恥を掻かせて自殺に追いやった男に恥を掻かせ返す話。第三夜は一獲千金を求め金を探しに出た男が狐に化かされる話。第四夜は少年時代に出会った謎の少女を一生追い求め続ける男の話。第五夜は人の形をした壁のシミを気にする余りノイローゼになる妻の話。第六夜は歳若い妻を娶った老人が、自分の死後も妻に貞操を守らせる為にある細工を施す話。第七夜は埋葬された棺の中で蘇生した時の為に、棺に夫の部屋に繋がる電話器を入れる様に遺言し亡くなった妻の話。第八夜は正体不明の魔物に助けを請う虐められっ子の話。第九夜は反省の無い殺人犯を無罪にした死刑廃止論者の凄腕弁護士の話。第十夜は子供が行方不明になった責任を感じて毎日公園で待ち続ける老女中の話。
 「蟻塚(ARIDUKA」は「月刊ハロウィン」1989年8月号に掲載。嵐の中ボートで遭難した主人公が辿り着いた島には、珍しい蟻に異常な執着心を持つ男・一馬(KAZUMA)と、彼に強引に妻にされたらしい麗子(REIKO)の2人が暮らしていた。一馬が蟻の世話をしに小屋へ入った隙に外から鍵を掛けた主人公は、麗子を連れて島を出ようとするが、潮流の関係で必ず島へと戻されてしまい、どうしても島から出られない。二か月後、麗子が小屋を覗きに行ってみると、一馬は身体を蟻に乗っ取られ、蟻塚にされた状態で生きていた。
 掲載誌2ヶ月分に跨る「逢魔が刻」「闇の哄笑」といった長編が有る一方で、2本立て・3本立ての話も多く、4ヶ月分に渡る連作で10本の短編を描き切った「夢十夜」の存在がやはり際立っている。「黒いレクイエム」での現在の里香の姿や「白樺心中」の腐乱死体、「蟻塚」での蟻に寄生された人々等グロテスクなシーンが多いが、個人的に一番恐ろしく思えたのは「夢十夜」第八夜の魔物の姿。主人公の分身なのだが、亡霊の様な不気味な描かれ方をしており、こんな相手と薄暗い山奥で出会ったりしたら悲鳴を上げて逃げ出してしまいそうだ。又、「五百旗頭家の怪」の征夫(MASAO)や「夢十夜」第四夜のエドワード(Edward)、第三夜の狐が化けた娘等、今巻では子供キャラの可愛らしさも際立っていた様に思う。第一夜のリサ(Lisa)の母もかなり魅力的なキャラ。
 あと、「光GENJI(HIKARU GENJI)」や「丹波(TANBA)」「マリック(Maric)」といった当時の芸能人の名前が良く出て来るのだが、これ等のエピソードに限っては、昭和30年代ではなく現代を舞台としていたのだろうか…?

 「生き人形(IKI-NINGYOU)」 永久保貴一(NAGAKUBO TAKAKAZU)・・・・・1985〜19??年に発表された表題作を含む中編及び短編8本に、描き下ろしのおまけページを加えた作品集。2000年8月16日発行。
 表題作の「生き人形」は「月刊ハロウィン」1986年4月号に掲載。タレント稲川淳二(INAGAWA JYUNJI)の体験談を漫画化した作品で、氏が語る怪談の中では最も有名な物の1つ。昭和52〜53年頃の夏、人形芝居の為に女の子の人形が2体作られたのだが、芝居の稽古の最中から関係者の周辺で様々な不幸や怪現象が相次ぎ、芝居の公演時にも原因不明の出来事が多発。この人形に纏わる怪異をTV番組で紹介しようとした際にも様々な怪現象が続発して大騒ぎに。人形に取り憑いた霊が、様々な霊を呼び寄せた事で怪現象が多発していたらしいのだが、「寺に納めた方が良い」と言う霊能者の忠告を無視した為に、人形の持ち主は気が変になってしまい、今でもまだ全ては終わっていないという、リアリティがあり過ぎて後味の悪い内容だ。
 「描いた私も呪われた①(KAITA WATASHI MO NOROWARETA①)」は掲載誌及び掲載時期不明。「生き人形」執筆中に作者の身の回りで起こった怪現象を綴った後書き漫画で、ギャグっぽく描かれてはいるが、執筆当時の当事者達にとっては非常に大変な時期だったに違いない。人形の持ち主が、人形を手放した事で人形使いとして復帰出来た事が描かれていた点だけは良い知らせだったと言える。
 「呪い釘(NOROI KUGI)」は掲載誌及び掲載時期不明。山中の製材所に勤めるルミ子(RUMIKO)は、運送会社に勤めるトラック運転手の関口(SEKIGUCHI)と結婚の約束をしており、2人が住む家を建てる土地を買う為に協力し合って貯金していた。しかし関口が何人もの女性と付き合っている事や、過去に結婚詐欺紛いの揉め事を起こしていた事を知り、自分が騙されていた事に気付いたルミ子は、丑の刻参りで関口を呪い殺す事を決意する。
 「お宮さん(OMIYA-SAN)」は掲載誌及び掲載時期不明。同じ大学病院に勤める医師・岩崎(IWASAKI)と看護婦・一美は恋仲だが、岩崎の実家には「お宮さん」という幽霊が取り憑いている為、過去に二度も見合いの相手に恐れられ、破談になっているという事情があった。岩崎の家でお宮さんの霊を目撃した一美は、その後岩崎の事を避ける様になってしまうが、岩崎への思いは断ち切れず、山で遭難した際に再び目の前にお宮さんが現れる。
 「遊ぶ踏切(ASOBU FUMIKIRI)」は掲載誌及び掲載時期不明。過去に何人もの人々が事故に遭い、何本もの卒塔婆が立てられた「魔の踏切」。そこで6人目の犠牲者が出た瞬間を目の当たりにした美雪(MIYUKI)は、新聞部で魔の踏切の事を記事にしようという意見が出た際に異議を唱えるが、結局取材は進められ、少女の霊に取り憑かれた美雪は踏切で命を落としてしまう。しかし事件はそれで終わりではなかった…。
 「白粉婆−怨念の蔵−(OSIROI-BABAA −ONNEN NO KURA−)」は掲載誌及び掲載時期不明。何時もコンパクトを手に、顔に白粉を塗りたくっている少しボケ気味の婆さんの事を、良夫(YOSHIO)達近所の学生は皆で虐めていた。ある夜良夫が徘徊する婆さんの姿を目撃した時には、実は既に婆さんは死んでおり、以後婆さんの霊に付き纏われる様になった良夫と良夫の姉は、婆さんの死体が見付かった土蔵へと導かれる。
 「黄昏症候群(TASOGARE SHOUKOUGUN)」は掲載誌及び掲載時期不明。この世ならざる物への強い関心を示す夕起子(YUKIKO)・望(MEGUMI)・安希(AKI)の3人は、噂の相次ぐ病院跡へとやって来た。何故か病院内は綺麗で看護婦や多くの入院患者達も居て、現在も使われている様子だったのだが、彼女達の目の前で突然全ては消え去り、彼女達は5年前の過去の世界へと足を踏み入れていた事を知る。PSのゲーム「トワイライトシンドローム(Twilight Syndrome)」のコミカライズ作品の様だが、登場人物達の名前は変更されており、間違えて「ユカリ(YUKARI)」というゲーム版のキャラ名のままになっている箇所があった。
 「描いた私も呪われた②(KAITA WATASHI MO NOROWARETA②)」は掲載誌及び掲載時期不明。「描いた私も呪われた①」の執筆後と「生き人形」の単行本発刊後、そして「カルラ舞う!(KARURA MAU!)」最終回執筆時までの体調の変化が主に描かれた後日談。
 「おまけのページ酒呪雑多(OMAKE NO Page SHUJYU-ZATTA)」は文庫本発刊に当たって描き下ろされた1Pの後書き漫画で、タイトルの「酒呪」の部分は「種々」の捩り。「生き人形」の発表から15年も経っているという年月の流れに何だか感慨深い物を感じる。
 先日購入した朝日ソノラマの「ハロウィン少女コミック館」版に収録されている5作品の内、4作品がこの文庫版にも収録されているが、「学校(GAKKOU)」だけが収録されておらず、「生き人形」巻頭の稲川淳二の推薦文や、「松竹映画「愛の陽炎」のストーリーをもとに創作したもの」という「呪い釘」欄外の注釈が無くなっている。後に死んで霊となる人物の生前の姿が描かれたり、味方となって守ってくれる霊も居るものの、それで親しみが湧くと単純に言い切れる様な物ではなく、生きている人間にとって「解らない存在」だからこそ、死後の世界という物は恐ろしく、また魅力有る物なのだといった作者のメッセージがどの作品にも込められている様で、そうした作者の姿勢にこそ強い親しみが感じられる。舞台設定が多彩だが、田舎や郊外等の懐かしい雰囲気や、前述の様な作者の視点に共通項があり、「こうした不思議な事件は、何処の地域の誰の身にも起こり得る」といったリアリティの有る恐怖感を生み出している。

 「永久保怪談 恐怖耳袋(NAGAKUBO KAIDAN KYOUFU MIMIBUKURO)」 永久保貴一(NAGAKUBO TAKAKAZU)・・・・・江戸時代に編纂された根岸鎮衛(NEGISHI YASUMORI)の随筆「耳袋(MIMIBUKURO)」に倣い、作者自身が聞き集めた恐怖体験談を漫画化した「永久保怪談 恐怖耳袋」シリーズ全5話と、心霊スポットへの取材漫画1本を収録した作品集。2006年7月に発行された単行本の新版で、こちらは2007年10月1日発行。
 第一話は「ほんとにあった怖い話」1994年9月号に掲載。「生き人形(IKI-NINGYOU)」執筆時の資料に纏わる漫画家の先生方の体験談と、八丈島のホテルに勤める彼氏が恐ろしい体験をしたと言う読者からのお便りを紹介。八丈島のエピソードは第四話でより詳しく語られる。
 第二話は「ほんとにあった怖い話」1995年7月号に掲載。「生き人形」と「四谷怪談」に続き、作者が描く事を躊躇ったと言う3つ目の恐ろしい話を作品化。美術大学の民俗学研究室のメンバーが「日本の憑きもの」について調べていた際に起こった、様々な怪現象とは?
 第三話は「ほんとにあった怖い話」1996年3月号に掲載。医学雑誌の編集者が病院関係者から聞いたと言う2つの不思議な話を紹介。癌が体中に転移し、死を待つばかりの若い母親と、心臓病の為、余命幾許も無い少年に纏わるエピソード。どちらも悲しい話だ。
 第四話は「ほんとにあった怖い話」1997年5月号に掲載。第一話で触れられた、八丈島のホテル従業員が体験した怪事件の完全版と、「カルラ舞う!(KARURA MAU!)」のアニメスタッフが体験した古い鏡に纏わる話を紹介。
 第五話は「ほんとにあった怖い話」1997年11月号に掲載。父が買った新居で家族が度々変になるという、元アシスタントの女性が語った体験談を紹介。「ちょっと笑っちゃう話」として紹介されているのだが、原因らしき黄色いモヤを、扇風機で物理的に吹き飛ばして事無きを得るという件は、確かに多少強引で笑えるかも知れない。
 「伊勢神トンネルの怪(ISEGAMI-Tunnel NO KAI)」は2005年5月発行「奇跡体験!アンビリーバボー」に掲載。TVで紹介していた心霊スポットに、後日雑誌の取材で訪れる事になった作者。奇怪な噂の絶えない伊勢神峠・旧伊勢神トンネル・伊勢神トンネルの3ケ所を全て回る事になった取材陣は、果たしてどの様な体験をする事になるのだろうか?
 ハッキリ言って「伊勢神トンネルの怪」は、これまでに読んだ全てのホラー漫画の中で最も怖い作品だと思います。こうしたTVや雑誌の心霊スポット紹介物は、視聴者ないし読者自身がその場に居る訳ではない為臨場感が皆無である上に、我々一般人には何も視えないので、視えると言う人だけが勝手に騒いでいる印象があり、全く怖く感じられないのが普通なのですが、霊が視えない一般人視点と、霊が視える霊能力者視点を漫画で並べて描くだけで、ここまで怖く思えるものなのでしょうか?「自分が気付いていなかった、あの時に起こっていた出来事」を、後で知ってゾッとする怖さ。滅多に起こりそうにない荒唐無稽な怪奇現象よりも、余程「もしかしたら自分の身にも起こっているかも知れない」という強い説得力が感じられて、恐ろしく思えるのです。これも作者自身が「視えない立場の人」であるが故の、構成の賜物だと思います。
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