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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画85【古本/ホラー漫画(松本洋子)】



 今回の本は11/18・11/27に購入した物です。11/18は「賭博堕天録 カイジ(TOBAKU DATEN-ROKU KAIJI)」の帯付き既刊を買う目的で、普段からよく利用している駅前の書店に向かったのですが、この書店へ行くには人通りの多い大きな踏み切りを渡る表の道と、裏通りから向かう道との2通りあって、私は何時も人込みを避けて裏通りを利用しています。ところが表側の道沿いに昔よく利用していた小さい古本屋があった事を思い出し、何時もと道を変えてそちらへ向かってみた所、その古本屋で今回や次回の日記で紹介する様な様々な掘り出し物を見付けたという訳なのです。
 最近は大手チェーンの勢いに押されて個人経営の小さい古本屋は次々と閉店に追い込まれており、今回行った古本屋も非常に規模が小さく、とっくに店を畳んでいてもおかしくないと思っていただけに、今でも店を開いていて様々な掘り出し物を扱ってくれていた事を、非常に嬉しく思っています。

 「黒の輪舞(KURO NO Rondo)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・「学園オカルト★サスペンス」と銘打たれた表題作と短編1本を収録した作品集。1983年1月10日発行。
 表題作の「黒の輪舞」は「なかよし」1982年7月号〜9月号に連載。従姉妹のジュリア(Julia)と共に名門ソーンウォール(Thornwall)校に入学したエリー(Ellie)。しかし寮は一号館から六号館まで家柄でランク付けされており、捨て子だったエリーはジュリアと離され、問題児が集る六号館に入る事になってしまう。生徒長のクラリス(Clarice)を始めとする一号館の生徒や先生にまで差別され、ジュリアが自分から離れて行ってしまう不安の中、次々と起こる殺人事件。今は使われていない古い礼拝堂で、夜毎黒ミサを行う怪しい集団は、首に黒い星形の痣と不思議な力を持つエリーの事を「ブラッククイーン」と呼び、彼女を利用して学院を支配するべく、仲間に引き入れようとする。
 エリーがブラッククイーンだという事は最初から解っている事なので、注目すべきは如何にして彼女が魔女信仰者達に利用されるかといった点だが、クラリスが余りにも嫌な奴過ぎる点や、心は優しいのだが上流階層気質のジュリアとの不和等、本人が意図せずとも次第に暗い心を持ち、邪教徒側に流れていく様子は実に自然な流れ。邪教徒達のリーダー・ナルダ(Narda)は、かつてクラリスに気紛れで恋人を奪われた恨みから、少しずつ狂い始めていったとの事なのだが、これだけでは動機としては弱過ぎるので、それは飽くまできっかけに過ぎず、元々クラリス同様に支配欲や権力志向が強い性格だったと考えた方が良さそうだ。因みに「黒の輪舞」は「黒の組曲(KURO NO KUMIKYOKU)」「黒の迷宮(KURO NO MEIKYUU)」と合わせて「黒のシリーズ」と呼ばれる作品群の内の1つだが、悪魔崇拝という共通点以外に、物語に直接の繋がりは無い。
 「哀しみのアントワーヌ(KANASHIMI NO Antoine)」は「なかよしデラックス」1982年3月号に掲載。厳しい夫の許を離れ駆け落ちした母に育てられたリアンナ(Rianna)は、自身の結婚を一か月後に控え、実父の許に残して来た弟アントワーヌの事が気掛かりで、家庭教師という名目で素性を隠して会いに行く事にした。しかしアントワーヌは気がふれているとの噂であり、財産目当てで父を殺した後妻と連れ子により命を狙われていると言う彼の心は、憎しみに支配されていたのだった…。
 憎しみに捕われ、姉の存在まで復讐に利用する悲しい少年の物語だが、「殺人よ こんにちは(SATSUJIN YO KONNICHIHA)」の夕海子(YUMIKO)や「天使の疑惑(TENSHI NO GIWAKU)」のエバの様に、事件を経て最後に〝黒い強さ〟を身に付けるのではなく、最初から既に邪悪な狡猾さを身に付けている点が、それ等の作品とは明確に違う点だと思う。復讐心に捕われ、邪悪な狡猾さを以て復讐を成し遂げるという内容は「氷のレクイエム(KOORI NO Requiem)」とも共通点があり、少年が主人公の復讐物の特徴だと言えるかも知れない。

 「黒の迷宮(KURO NO MEIKYUU)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・1983年〜1984年に発表された表題作を含むホラー作品を5本収録した中・短編集。1984年11月6日発行。
 表題作「黒の迷宮」は「なかよし」1984年8月号〜9月号に連載。事故で記憶を亡くした少女は、アンダーソン(Anderson)夫妻に引き取られ、ミリアム(Miriam)と名付けられて可愛がられるが、財産目当てに夫妻に取り入って養女の座を狙っていたジニー(Jeannie)に疎ましがられる。ミリアムの静養を兼ね、夫人の姉・メリッサ(Melissa)が住むソールズベリ(Salisbury)館へと向かった一行だが、メリッサはミリアムの顔を見るなり動揺して倒れ、そのまま還らぬ人となってしまった。先祖の遺言状に書かれていた、171年前に死んで蘇った魔女・アーロネッサ(Aaronessa)が復讐の為に戻って来たのだと思い込んでしまった事が原因だが、ジニーと恋人のエディ(Eddie)はその事を利用してミリアムを陥れようと画策する。
 「もういくつねると…(MOU IKUTSU NERU TO…)」は「なかよし」1984年1月号に掲載。美登里(MIDORI)・早苗(SANAE)・京子(KYOUKO)・真希子(MAKIKO)の4人には、六年前志保(SHIHO)を空き家に呼び出して置き去りにし、志保はそのまま行方不明になってしまったという、後ろ暗い過去があった。早苗が殺害された直後に、美登里達のクラスに志保と同名で顔もそっくりの転入生がやって来て、自分達に復讐する為に志保が帰って来たのだと思い、動揺する美登里達だったが…。
 「13番めの星座(JYUUSAN-BANME NO SEIZA)」は「なかよしデラックス」1984年2月号に掲載。サリー(Sally)に心変わりしたポール(Paul)を引き止めようとして殺してしまったリズ(Liz)。放心して街へと彷徨い出たリズは、ポールが生きていて、サリーと会い2人で去って行く所を目撃する。しかし部屋へ戻るとポールの死体はまだそこにあり、サリーの母から、サリーがつい先程事故で死んだと聞かされる。
 「壁の中(KABE NO NAKA)」は「なかよしデラックス」1984年2月号に掲載。隣家の奥さん・エレーヌ(Helene)に憧れを抱く少年・トニー(Tony)。浮気者の夫・ファレル(Farrell)に暴力を振るわれているエレーヌだったが、ある日エレーヌが行方不明になった直後にファレルも姿を消し、ファレルがエレーヌを殺して逃げたと思ったトニーが、隣家に入り込んで家捜しすると…。
 「青い闇の天使(AOI YAMI NO TENSHI)」は「なかよしデラックス」1984年2月号に掲載。別荘で静養中のママの許へ遊びに行ったマリィ(Mally)は、顔半分が焼け爛れた少女の霊を目撃し、自分に双子の姉が居て、人知れずここで暮らしていた事実を知らされる。
 「黒の迷宮」はミリアムがアーロネッサなのか否かが焦点となる訳だが、悪役のジニーとエディが、ミリアムを追い出す為にそう決め付けたがっている事から、読者としては「違う」と思いたい一方で、本当に同一人物であり、恐ろしい魔力を使ってこの2人を懲らしめて貰いたいという気持ちもあって、そうした読者自身の複雑な思いこそが、ミスリードを生み出す要因となっていると言って良いかも知れない。「もういくつねると…」も同様に、転入して来た志保は本当に六年前に行方不明となったあの志保なのか、連続殺人の犯人も志保なのか終盤まで謎であり、先が気になる展開で、色々想像させながら読ませてくれる。「13番めの星座」「壁の中」「青い闇の天使」は全て同じ雑誌の同年月号に掲載されており、ページ数も短く簡潔明瞭である分、却って強く印象に残る内容だ。因みに「黒の迷宮」は「黒の輪舞(KURO NO Rondo)」「黒の組曲(KURO NO KUMIKYOKU)」と合わせて「黒のシリーズ」と呼ばれる作品群の内の1つだが、悪魔崇拝という共通点以外に、物語に直接の繋がりは無い。

 「見知らぬ街(MISHIRANU MACHI)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・1987〜1989年に発表された、表題作を含む中編ホラー作品を3本収録した作品集。1990年2月6日発行。
 表題作の「見知らぬ街」は「なかよし」1989年9月号に掲載。唯(YUI)・さおり(SAORI)・夏樹(NATSUKI)・江里子(ERIKO)・卓巳(TAKUMI)の5人は岡村(OKAMURA)の運転で旅行に行く途中事故に遭い、気が付くと見知らぬ街に居た。幾ら歩いても街から出られず、皆が不安で苛立ち始めた頃、1枚の破れた新聞記事が落ちて来る。それを読むと、軽傷で済んだ岡村を除いて4人が死亡したと書かれており、この街は生と死の狭間の世界であり、5人の内ここから抜け出せた1人だけが助かると考えた皆は、自分1人が助かろうとする者、協力し合って皆で助かろうとする者、それぞれに出口を探し始めるが…。
 「ようこそミステリーツアーへ(YOUKOSO Mystery Tour HE)」は「なかよしデラックス」1987年秋の号に掲載。加那(KANA)・従兄弟の陸(RIKU)・加那の弟喬(TAKASHI)・喬のGFなつき(NATSUKI)の4人は、離れ小島で百万円相当の宝物を探す「宝さがしツアー」に参加する。島にはホテルが1軒あるのみで、シンプルな宝の地図に描かれているのは、どう見ても船着き場からホテルまでの一本道。幽霊騒ぎでキャンセル客が相次ぐ中、一本道には宝を探す他の客が殺到し、一向に宝物は見付からない。客に何かを見付けさせたがっているオーナーに対し、息子の譲(YUZURU)はそれに反発している様子。果たしてこの企画に隠された秘密とは?
 「アは悪魔のア(A HA AKUMA NO A)」は「なかよしデラックス」1988年初夏の号に掲載。ある日加那と陸は、背中にナイフを突き立てられ瀕死の男性から、悪魔の像を手渡される。事件は警察沙汰になるが、警察に渡した筈の悪魔の像が何故か何度も陸の部屋へと戻って来て、陸は像の中に居た悪魔に取り憑かれてしまう。加那達4人は悪魔に協力して、メキシコの神殿から盗まれた天使像を取り戻す為に奔走する。
 「見知らぬ街」は、当初期待していたホラーアドベンチャーゲームの様な探索重視の展開ではなかった点が少し残念ではあるが、全50Pという限られたページ数の中で、5人の主要登場人物達のキャラクター性と相関関係を紹介しつつ、1人ずつ脱落していく緊張感を描き、ラストの反転に繋げるという、構成力と物語全体の完成度の高さには唸らされる。「ようこそミステリーツアーへ」と「アは悪魔のア」は同じ登場人物達が活躍する連作物で、裏表紙の紹介文では「サスペンスコメディー」と銘打たれており、確かに9割方コメディで笑える箇所も多いのだが、人が死んだり主人公達に死の危険が迫るといった緊張感もあり、完全なギャグ物とは言い難いかも知れない。4人の主要登場人物達のやり取りが非常に楽しいので、単行本1册分ぐらいの長編か、独立したホラーコメディシリーズとして、もっと長く楽しませて貰いたかった様にも思う。

 「死を唄う星座(SHI WO UTAU SEIZA)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・1993年に発表された表題作を含む中編ホラー作品を2本収録した作品集。1994年6月6日発行。
 表題作の「死を唄う星座」は「なかよし」1993年9月号〜10月号に連載。周囲を断崖絶壁に取り囲まれ、吊り橋でしか渡れない不便な場所に建てられたペンションに、アルバイトにやって来た高野まひろ(TAKANO MAHIRO)。オーナーの山科織江(YAMASHINA ORIE)、姪の由布子(YUUKO)、高校の天文部員である3組の宿泊客・大樹(HIROKI)と怜(REI)、深月(MIDUKI)と歩(AYUMI)、美也子(MIYAKO)と潤一(JYUNICHI)、合わせて9名がこのペンションにて共に数日過ごす事となった。しかし翌朝内側から鍵が掛かった密室で怜が殺されていた事を皮切りに、歩が行方不明となり、潤一がナイフで自分の体を傷付け、死んでしまう。果たしてこれは恨みを持った悪霊の仕業なのか、それともこの中に殺人犯が居るのだろうか?
 「霧と炎と殺人と(KIRI TO HONOO TO SATSUJIN TO)」は「なかぞう」1993年夏休み号に掲載。霧の日に墓地へ行くと死んだ人に会えると言う「ふりむけば霧(FURIMUKEBA KIRI)」、感情が昂ると無意識に炎を発してしまう少女の物語「炎の戦慄(HONOO NO SENRITSU)」、夢に出て来る霧の中の館を湖の畔で見掛け、予知夢の運命を変える為にそこへと向かう「時の館(TOKI NO YAKATA)」の3本立て。
 交通手段や連絡手段が途絶えた山奥のペンションで殺人事件が起きるという「死を唄う星座」の設定は、「かまいたちの夜(KAMAITACHI NO YORU)」を思わせるが、発表されたのはこちらが先。大掛かりな仕掛けの割にトリック自体は単純なのだが、謎が解けて全てが終わったと思った矢先に本当の殺人事件が起きる等、最後まで予断を許さない。織江の趣味で建てられたペンションなのだが、「時の館」の霧の中に現れる館共々、丸で人を惑わせる為に人知を超えた何者かが用意したかの様な舞台設定には、何やら神秘的な魅力を感じずには居られない。「炎の戦慄」はまつざきあけみ(MATSUZAKI AKEMI)の「焔(HOMURA)」に似た内容だが、こちらは好きな男性に裏切られた事で、自分の意志で力を扱える様になるというバッドエンド。明確なハッピーエンドは存在せず、どちらかと言うとバッド寄りのラストが多く、物悲しい印象を残す作品集となっている。

 …ところで最近知ったのですが、松本洋子の作品には様々な盗作疑惑があって、恐らくはそれが為に執筆活動も続けられなくなってしまった様です。大きく分けてストーリーと作画の構図、一部脇役キャラ等にも他作品からの流用がある様で、検証サイトでの比較画像を見た所、確かに言い逃れ出来ない程そっくりそのまま使われている物が多々ありました。残念な事です。
 盗作やPAKURIは決して許される事ではありません。ただ、自分の作品の幅を広げる為に他者から良い所を吸収したいという気持ち、それ自体は純粋な向上心であり、余り否定したくない思いもあります。盗作疑惑が全く無い、完全にオリジナルの作品の中にも良い作品は数多くありますし、松本洋子作品に於ける最大の特徴である「ヒロインの可憐さ」、これ自体は他者の絵を表面的に真似るだけでは絶対に描き切る事の出来ない、作者自身の感性から生み出された物である事に間違いは無い筈。ストーリーや絵の上手さ(特に盗作疑惑がある物)ばかりを誉める事は、PAKURIを擁護する事にも繋がってしまう為、控えた方が良いかも知れませんが、作者自身の感性から生み出された内面的な部分に関しては、これからも素直に評価していきたいと、そう思っています。
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