最近購読した漫画139【古本／ホラー漫画(秋田書店)】

　ひばり書房・立風書房とくれば、次は秋田書店のホラーコミックス。ひばり・立風と同様、貸本時代からの由緒有るホラー漫画出版元であり、一部の作家がひばり・立風とも重複していて、特に描き下ろし作品にはＢ級ホラーファンを満足させる様な内容の物も多く、決して無視出来ないレーベルだと思うのですが、何故かマニアにはかなり軽視されている印象があります。
　その原因として考えられるのは、まずレア度が低い事。ひばり・立風が撤退した後の時代にもずっと刊行され続けていたが故に、古本屋で普通に見掛ける事が多い為、レア物コレクターにとっては発掘し甲斐が無い分、魅力に欠けるのかも知れません。しかしこれはマニア特有の「レア度と面白さは比例する」という変な価値観で作品を判断してしまっている事になり、間違った評価基準だと言わざるを得ないでしょう。
　次に描かれた時代が新しい為に、薄暗い路地裏の様なアングラさに欠ける事。これは解ります。現在から時代が遠ければ遠い程、その「時間的距離感」に対して、何やらDNAに刻み込まれた慕情の様な感情が刺激される。故に、比較的新しい時代の作品には、そういった昔の作品に対して感じる「特別な愛着」を持つ事が出来ない訳です。これはまぁ、仕方の無い事かも知れません。
　そして時代が下る毎に描き下ろし作品が減り、90年代以降は、ほぼ全て雑誌掲載作品の単行本化となる事。これは出版社がメジャーである事とも関連していて、難癖を付けてくる規制派の目に触れる機会も多くなる事から、余り無茶な事が出来なくなり、「無茶をしている所が良い、無茶であるが故のＢ級作品の魅力」が意図的に薄められてしまう事にも繋がり得る、重要なファクターである様にも思われます。

　さて秋田書店と言えば、先日「チャンピオンREDいちご」で連載されていた「あきそら」が、近親相姦を扱っているという事から都の治安対策課による厳重注意を受け、７月以降単行本を重版しない事を出版社側が決定した様です。都の圧力に出版社が屈した形になる訳で、石原が当選した途端これかよ…と腹立たしく思うと同時に、作品を、作家を、延いては表現の自由を、徹底的に抗って守ろうとしない秋田書店のヘタレ振りにも涙が出ますが、そもそも「出版社」という大きな組織同士が連係し合ってより大きな力となり、こうした巨悪に立ち向かおうという気概が、どの出版社にも全く見られない所が情けない。国内だけでなく外国からも度々謂れの無い難癖を付けられ続けている様な状況下で、戦う事を全部作家個人に押し付けており、これはもう作家に「死ぬならお前１人だけで死ね」と言っている様なものですから。日本の出版界に「表現の自由を守る」という正義は無いのか？その程度の覚悟も無いのなら、出版業なんか辞めちまえ！
　…ともあれ「あきそら」、今までタイトル名すら知らない作品だったのですが(毎度不勉強で申し訳ない…)、表現の自由を守る戦いに微力ながらも支援するという意味からも、今から単行本を探して買ってみるのも良いかも知れません。内容を調べてみると結構面白そうでもありますしね。

　今回の本は3/22・4/15・4/26に購入した物で、全て雑誌掲載作品の単行本化です。

　「学園七不思議(GAKUEN NANA-FUSHIGI)」　つのだじろう(TSUNODA JIROU)　４巻

　「魔空の天使(MAKUU NO TENSHI)」　田中雅子(TANAKA MASAKO)　１・２巻

　「アルスの翼(Ars NO TSUBASA)」　田中雅子(TANAKA MASAKO)　１巻

　「死太郎くん(SHITAROU-KUN)」　千之ナイフ(SENNO Knife)