忍者ブログ

漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

最近購読した漫画61【古本/ホラー漫画(松本洋子)】



 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)の作品は、「ホラー」と言うよりは「ミステリー」や「サスペンス」に近い内容だと思うのですが、広い意味での「ホラー」には、「ミステリー」も「サスペンス」も「オカルト」も「怪談」も全て含まれると思うので、とりあえず「ホラー」というカテゴリーに区分して紹介したいと思います。複数の要素が含まれる作品や作品集も多いですし、厳密にそれ等を区別するのはかなり困難だと思うので…。
 同作者の作品に於けるもう1つの大きな特徴は、やはり何と言ってもヒロインの可憐さ・愛らしさだと思います。楳図かずお(UMEZU KAZUO)の初期作品を見ても解る様に、元々少女系ホラー漫画というのはメロドラマ的な要素が強く、純真可憐な少女が不幸な目や恐ろしい目に遭ってしまうという理不尽さこそが、恐怖の肝だった様に思うんですよ。好ましいタイプのキャラならば、無事に助かってハッピーエンドを迎えて欲しいと思うのは読者として当然の気持ち故に、展開やラストに何らかの反転があれば驚きや悲しみも倍増されますし、これが逆に憎たらしいキャラだったならば、酷い目に遭ってくれた方が溜飲が下がる思いがするというものですからね。
 今回の本は10/9・10/27に購入した物です。

 「だれかが見つめてる(DAREKA GA MITSUMETERU)」 安芸永里子(AKI ERIKO)&松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・1981年に発表されたホラー作品3本を収録した中・短編集。1982年3月5日発行。
 表題作の「だれかが見つめてる」は「なかよし」1981年12月号〜1982年1月号に連載された安芸永里子原作の作品。父を亡くし、母と2人暮らしの麻美(ASAMI)。学校では親友の信子(NOBUKO)を意地悪なクラスメートの可奈(KANA)に奪われ、家では母が再婚相手の足立(ADACHI)を連れて来る等、様々な悩みを抱えていた麻美は、ある日拾って来た猫から、嫌な相手には逆らう様そそのかされる。足立に貰った絵本を破り捨て、母の財布からお金を盗み、管理人のおばさんに怪我をさせ、可奈を脅し…。母と足立が事故に遭い重症を負うに至って、一度は猫の仕業だと詰め寄るも、全ては自分が望み、自分がした事だと悟った麻美は、部屋に火を点けて猫と心中しようとするが…。
 「人形たちの夜(NINGYOU-TACHI NO YORU)」は「なかよしデラックス」1981年9月号に掲載。アンチック人形を買ってからというもの、別人の様に性格が変わってしまったリュシー(Lucie)。突然別れ話を切り出された恋人のロビン(Robin)は不審に思い、原因を知る為、人形を買った店でアルバイトを始める。ある時、店主カート(Kurt)の元婚約者だった女性ソニア(Sonia)が現れ、カートも人形を手に入れてから突然性格が変わり、ソニアとの婚約を破棄して出て行ってしまったのだと言う。店で売られているアンチック人形には、一体どんな秘密が隠されているのだろうか…?
 「氷のレクイエム(KOORI NO Requiem)」は「なかよしデラックス」1981年2月号に掲載。母を湖で亡くしたアンジー(Angie)。間も無く父は秘書のクレア(Claire)と再婚するが、その結婚披露パーティーの際に、母の生前から2人が関係していたという噂を耳にしたアンジーは、母が2人の手により殺された事を確信し、復讐を開始する。
 被害者の立場のキャラが皆非常に愛おしく、特に「だれかが見つめてる」の麻美が罪の意識を感じて涙を流す表情など、余りにも萌え過ぎる。麻美に脅される可奈や、娘が死んだ時のクレア等、主人公と敵対している立場のキャラも、被害を受ける立場に回るとやはり萌える。これは単に絵柄や感情表現の技術のみに因るものではなく、「可哀相な立場」に置かれた者に対する作者の優しさが、紙面を通して読者に伝わっているからではないかと思う。3本中ハッピーエンドは「だれかが見つめてる」のみであり、「人形たちの夜」はバッドエンド、「氷のレクイエム」は復讐は果たしたもののハッピーエンドとは言えず、どちらも物悲しい余韻を残すラストとなっている。

 「ばらの葬列(BARA NO SOURETSU)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・1984〜1985年に発表されたホラー作品4本を収録した短編集。1986年4月5日発行。
 表題作の「ばらの葬列」は「なかよし」1985年9月号に掲載。三週間振りに家に帰って来たレイ(Ray)は、父の知り合いの娘・ジュリア(Julia)と出会う。母を殺害されてこの家に匿われているジュリアだが、実はジュリアは産まれてすぐに死んでしまったレイの実の妹であり、16歳になったら悪魔に奉献するという契約の下蘇らせられ、悪魔崇拝者達にその身柄を狙われていたのだった。誕生日が近付くに連れ、悪魔が乗り移る予兆とでも言うべき残虐性を発揮し始めたジュリアを、レイは何としても救おうとするが…。
 「闇の迷路(YAMI NO MEIRO)」は「なかよしデラックス」1984年11月号に掲載。事故で父を亡くしたショックで視力を失ってしまったナンシー(Nancy)。一緒に暮らしている叔母と従姉妹のカレン(Karen)は、ナンシーの為と称して彼女の味方となりそうな人物を次々と引き離し、何かに躓いて階段から落ちそうになったり、食事に毒が入れられているといった、明らかな殺意がナンシーを襲う様になる。父の事故も故意に起こされた物だと知ったナンシーは…。
 「天使の疑惑(TENSHI NO GIWAKU)」は「なかよし」1984年12月号に掲載。天使の様に美しい従姉妹のマリオン(Marion)と一緒に暮らす事になったエバ(Eva)。しかしマリオンはその容姿とは裏腹に、自分と亡くなった母が苦労していた時に手を差し伸べず、裕福な暮らしをしていたエバとその両親の事を憎み、エバから全てを奪うべく、周囲の人々の弱味を握って抱き込む等、狡猾で悪魔の様な本性を現し始める。
 「もうひとりのあたしへ…(MOU HITORI NO ATASHI HE…)」は「なかよしデラックス」1985年11月号に掲載。覚えのない約束を破ったとアーティ(Arty)に責められたジェニファー(Jennifer)。当初は二重人格かと疑うが、実はアーティに憧れる少女の霊がジェニファーに取り憑き、時々体を乗っ取って勝手に行動していたのだった。全編コメディだが、最後はしんみり。
 ヒロインが皆可憐で愛らしく、守ってあげたくなるタイプだという点は他の作品とも共通しているが、後半恐れられる存在となる「ばらの葬列」のジュリア、最後まで被害者的立場を貫く「闇の迷路」のナンシー、敵対している相手から〝黒い強さ〟を学び、最後に復讐を遂げる「天使の疑惑」のエバ、元気で何処か間が抜けているが、図太い強さも合わせ持つというコメディ向けのヒロイン・ジェニファーとシンシア(Cynthia)といった具合に、ヒロインの描かれ方はバラエティに富んでいる。事件は解決するものの、微妙にハッピーエンドとは言い難い点も共通しており、最後に死んでしまうジュリアとシンシア、狡猾さを身に付け、もはや何も知らない純真な少女ではなくなってしまったエバ等、ヒロインが最後に辿る悲しい結末が、読後の余韻にそのまま繋がっている例も多い。懐かしいタイプの正統派少女向けホラーを求める方にお薦めしたい1册。

 「呪いの黒十字(NOROI NO KUROJYUUJI)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO) 1・2巻・・・・・「なかよし」1986年10月号〜1987年8月号に連載。1巻は1987年8月6日発行、2巻は1987年9月5日発行。
 尖塔に折れた十字架が立つ古い教会に、父のホワイト(White)神父と共に引っ越して来たアーデン(Arden)・アデル(Adele)兄妹。ある日ホワイト神父は事故に遭い、「黒の十字架にふれてはだめだ」という謎の言葉を残して息を引き取る。司教区から新しい神父が来る為、一か月後には教会を出なければならなくなってしまった兄妹だが、実はこれは、教会に隠されていると噂される財産を探す為の、村長の息子・ジェフリー(Jeffrey)の企みであった。地下室に忍び込んだジェフリーが無惨な死を遂げた事を村長に逆恨みされた兄妹は、次々と起こる殺人や墓荒らし・家畜の死等の怪事件も全て自分達の仕業とされ、地下室に巣食う化け物・デスティ(Desti)の存在と、村人達から命を狙われるという二重の危機に直面してしまう。村長を憎んだアーデンがデスティと取り引きする一方で、事情を知る謎の男性レナン(Renan)と出会ったアデルは、兄を説得してレナンに協力し、全てを終わらせようとするが…。
 五百年前に教会の地下に封印された、人の命を糧とする姿の無い邪悪な化け物。自分が被害を受けたという怒りと憎しみのやり場を兄妹に向けているだけの、迷信に取り付かれた村人達の集団ヒステリー。どちらも恐ろしいが、本気で兄妹が全ての事件を起こしたと思っているのかどうか、冷静な判断が出来なくなってしまっている村人達の考え方と行動は非常に腹立たしく、デスティと取り引きする事にしたアーデンの気持ちも理解出来るというもの。しかしそもそもの発端はデスティが復活した事にあり、村人達の悪意も全てデスティの力に因り増幅されていたのだとすると、やはり一番恐ろしいのはデスティであり、村人達も皆哀れな犠牲者だったと言えるかも知れない。ラストは少し御都合主義的な気もするが、素直で純真で心優しく愛らしいアデルが、家族も友も皆失い、たった1人で生きていかねばならないというのは余りにも可哀想過ぎるので、このラストに関しては心から歓迎したいと思う。ホワイト神父の事故原因については言及されておらず、物語のきっかけとなるただの交通事故だった様なのだが、デスティかジェフリーが関係していた事にした方が、ストーリー的には収まりが良かった様に思うので、その一点だけが少し残念。

 「見えないシルエット(MIENAI Silhouette)」 松本洋子(MATSUMOTO YOUKO)・・・・・「なかよし」1987年11月号〜1988年3月号に連載された、学園ミステリーロマン。1988年6月6日発行。
 兄の友人・海枝(KAIEDA)に憧れを抱く千夜子(CHIYAKO)と、千夜子の兄・高哉(TAKAYA)に憧れを抱く久美(KUMI)は、仲の良い友人同士。ある日出すつもりのなかった海枝への手紙を、高哉が勝手に持ち出して海枝に渡した事から、千夜子と高哉はケンカとなり、家を飛び出した高哉は不良達に襲われて死んでしまう。運び込まれた病院で息を吹き返した高哉は、その後性格が一変。冷たく残虐な性格となった高哉の事を、千夜子は不審に思う。周囲で高哉の邪魔になる存在が次々と殺害されていく中、前理事長の息子・柴崎(SHIBAZAKI)の魂が高哉の体に入り込んでいる事を知った千夜子は、現理事長である父に相談するも信じて貰えず、信じて貰えない事を恐れて海枝にも相談出来ず、自分が利用されているだけとは知らない久美も、高哉に振り向いて貰えた喜び故に、彼の言いなりになってしまう。柴崎の狙いは現理事長への復讐と次期理事長の座であったが、高哉の肉体が長くは持たない事を知った柴崎が取った次の手は…。
 ケンカしたまま別れた兄がそのまま帰らぬ人となってしまった事と、兄が渡した手紙が元で海枝と付き合う事になったにも関わらず、その御礼を言う事も出来ない千夜子の心境を思うと、胸が締め付けられる思いがする。それでも最初の内は実の兄が還って来たと信じていた訳だが、物語が本題に入るのは高哉が死んだ後であり、何時も身近に居るのが当たり前だった存在が居ないという空虚感の中、頼れる者も居ないままに、大きな事件に立ち向かわなければならないというのは、嘸かしつらい事だったろうと思う。海枝は千夜子の為に、千夜子は海枝の為に自分を犠牲にして行動し、最後の最後に2人を救ったのは、高哉の存在と、千夜子の名を呼ぶ父の声。久美との和解を思わせるラストシーンといい、人と人との絆がテーマである事は間違いないだろう。ハッピーエンドではあるが、やはり何処か物悲しさを感じさせる作品だ。
PR
Comment form
お名前
メールアドレス
URL
タイトル
コメント
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新トラックバック
プロフィール
HN:
manken99
性別:
男性
自己紹介:
単なる一介の漫画読み。
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
  Copyright 2024 漫画読書日記 All rights reserved.
Template Design by LockHeart|powered by NINJA TOOLS 忍者ブログ [PR]