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漫画読書日記

自己満足の為の読書感想文。

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最近購読した漫画147【古本/ホラー漫画(稲川淳二)】



 実話系のホラー漫画も数多く発行されていますが、今回は稲川淳二の怪談が原作の物を集めてみました。氏の語る怪談はTV番組や書籍・CD・ゲーム等あらゆるメディアで触れることが出来、同じ話を別のメディアで聞いた時に微妙に内容が違っていたりして、そうした発見をすることも又楽しみの1つだったりします。積極的に稲川淳二の怪談を集めているという訳ではないので、まだまだ知らない話の方が多く、知っている話が漫画になっているのを見付けたりすると、ちょっと嬉しくなりますね。
 元々実話系ホラー漫画に関しては、内容が本当に全て「実話」なのかどうか眉唾に思っている事から、これまで意識的に避けていた所がありました。しかし考えてみれば、子供の頃都市伝説めいた怪談を友達と話し合ったりしていた時も、その話が「本当かどうか」よりも、話の内容自体を楽しんでいた所があった様な気がします。以前聞いた話を別の友達に話す時に、自分のオリジナルの部分を付け加えたりして…。その時点でもう「事実」ではなくなってしまっている訳ですからね。「学校の怪談」辺りから、真偽に関係無く実話系ホラー漫画も素直に楽しめる様になっていった様に思います。

 私が稲川淳二の怪談を聞いたのは、「4時ですよ~だ」という関西ローカルのバラエティー番組(1987年
4月7日~1989年9月30日放送)で、かの有名な「生き人形」の話を聞いたのが最初でした。現在の様に「稲川淳二と言えば怪談」というイメージをまだ持っていなかった頃なので、とても驚いた事を覚えています。当時既に永久保貴一に依って漫画化されていた事は当然知る由も無く、次に稲川淳二の怪談を聞いたのは数年後で、「月刊ハロウィン」に掲載されたホラー漫画を初めて読んだのも数年後。もう少し早く稲川淳二の怪談にも「月刊ハロウィン」にも興味を持っていれば、永久保貴一の「生き人形」をリアルタイムで読めていたかも知れないと思うと、次に出会いの機会を得るまで20年以上も掛かってしまった事が、何だかとても感慨深く思えてくるのです。

 今回の本は2011年4/12・5/21に購入した物です。

 「「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI)」 稲川淳二(INAGAWA JYUNJI) 5巻
 リイド社 SPコミックス ホラーウーピーコミックシリーズ。1999年7月25日1刷発行。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集で、5巻には1998年~1999年に発表された作品に描き下ろしを加えた、7人の作家による7作品を収録。

 第1話『見知らぬ声(MISHIRANU KOE)』は「ホラーウーピー」1998年冬の号に掲載された桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。大学を出て一人暮らしを始めたかおり(KAORI)。深夜に窓の外から聞こえる「ユキちゃん……ユキちゃん……」と呼ぶ声は、どうやらかおりの部屋に向かって呼び掛けているらしく、ある夜とうとう声が部屋の中から聞こえてくる。
 第2話『焼けた日(YAKETA HI)』は荘屋美登利(SOUYA MIDORI)による描き下ろし作品。番組のロケに使わせて貰う為、親友の店へとやって来た構成作家。留守中の親友を店の中で待っていると、怪しい女が入って来て、この店で昔火事があり、友達が焼け死んだという話を語り始める。
 第3話『内ヶ島一族滅亡の謎(UCHIGASHIMA ICHIZOKU METSUBOU NO NAZO)』はエンゾ・円蔵(ENZO・ENZOU)による描き下ろし作品。昔金山があった岐阜県の白川郷(SHIRAKAWA-GOU)で、欲深い当主が神社に祀られた黄金の本尊にまで手を出した為に、突然起こった竜巻により一族は皆滅亡してしまったと言われる内ヶ島伝説。その伝説を裏付けるかの様に、ある砂利業者が山の斜面に空いた不自然な穴の辺りを掘り起こしていた時に、様々な怪奇現象に出会したと言う。
 第4話『とりついた家(TORITSUITA IE)』は河崎千(KAWASAKI SEN)による描き下ろし作品。父の仕事の都合で、大阪から九州へと引っ越して来た一家。夜、母と娘は怪しい物音と女の姿に怯えるが、父と息子には何も聞こえず、女の姿も見えない。家を出る・出ないで夫婦喧嘩となり、結局又大阪へ戻る事になって、安心した一家だったが…。
 第5話『踏切に立つ女の影(FUMIKIRI NI TATSU ONNA NO KAGE)』は枝松亜紀(EDAMATSU AKI)による描き下ろし作品。幼稚園の開園イベントをラジオ番組の企画に紹介した稲川は、そのイベントの帰りに、近くの踏み切りで突然車が停まってしまって、危うく事故を起こす所だったと、スタッフから聞かされる。実はその場所は現地でも有名な心霊スポットであり、後日その踏み切りでテレビの怪奇番組の企画を行う事になるが…。
 第6話『百物語(HYAKU-MONOGATARI)』は瀬河美紀(SEGAWA MIKI)による描き下ろし作品。話を終えるとローソクを消すのではなく、逆に点けていくという流儀で百物語を行った人物の体験談と、雨の夜に突然の編集長命令で、百物語の取材を行う事になったフリーライターの体験談を紹介。
 第7話『魂を喰らうシミ(TAMASHII WO KURAU SHIMI)』は「ホラーウーピー」1999年春の号に掲載された野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。村に一人暮らしで寝たきりのばあさんがよく話をしていた相手は、人の顔をした天井のシミだった…という話と、天井のシミが妙な音を立てる度に誰かが死んで、シミが大きくなるという、シミに因んだ2本の怪談を紹介。

 7作品中、私が元になった怪談を知っていた物は『見知らぬ声』のみ。これはオチが決め手となる比較的シンプルな怪談で、漫画化するのは少々難しかったのではないかと思う。『焼けた日』『とりついた家』『百物語』等、今巻では大阪在住者や出身者の怪奇体験が目立つが、物語の舞台自体は東京・岐阜・九州・京都・新潟等多くの地域に渡り、その地域に伝わる伝説やお祖母さんの子供時代の話といった昔の話も含まれている事から、距離的・時間的な内容の幅広さに、何処か神秘的な雰囲気をも感じさせられる。雨の中、店のドアの前に立つ女の影や、庭の木にぶら下がる女の首吊り死体、百物語の取材の後、たった1人で暗くて寒い寺の中に取り残される等、絵そのものよりも「その場の雰囲気」で不気味さを感じさせてくれるシーンが多いのも今巻収録作品の特徴だ。


 「「「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI)」 稲川淳二(INAGAWA JYUNJI) 6巻
 リイド社 SPコミックス ホラーウーピーコミックシリーズ。1999年10月3日1刷発行。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集で、6巻には1999年に発表された8人の作家による8作品を収録。

 第1話『八王子怨霊地帯(HACHIOUJI ONRYOU CHITAI)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された野口千里(NOGUCHI SENRI)の作品。八王子城址(HACHIOUJI-JYOUSHI)での撮影時に、吐き気を催す程の凄まじい霊気を感じた稲川。別の番組の撮影で同じく八王子にある首なし地蔵に行った際、自分の首を手に持っているという不気味なその地蔵に触ったスタッフが、後日事故に遭い入院してしまう。
 第2話『謎の視線(NAZO NO SHISEN)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。アンティーク好きの女性が、新たに買った古いドレッサーを部屋に置いてからというもの、常に誰かに見られている様な視線を感じ、自分で自分の後ろ姿を見ている様なイメージを頻繁に思い浮かべる様になる。そんなある日、鏡に映った自分の姿を見た彼女は、ある事に気付き…。
 第3話『舞台に墓石を置いたのは…!?(BUTAI NI HAKAISHI WO OITANOHA…!?)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された高塚Q(TAKATSUKA Q)の作品。かつて舞台美術の勉強の為、劇団に顔を出していた稲川。「ひめゆりの塔」の舞台をやっていた頃、誰も運んだ覚えの無い墓石が舞台袖に置かれていて、それが何時の間にか消えてしまっていた。更に誰も居ない筈の客席の上の段に、照明を当てているかの様に浮かび上がる白い人影が…。
 第4話『夜の訪問者(YORU NO HOUMONSHA)』は「ホラーウーピー」1999年夏号に掲載された長間弘美(NAGAMA HIROMI)の作品。自分で作った着物を人形に着せる事が好きだったお婆さんが火事で亡くなり、人形はお祓いをして稲川の友人に預かって貰う事になった。ところがそれ以降、お婆さんの孫娘が、夜になると母親には見えない『おねえちゃん』と話をする様になり、詳しく話を聞いてみると、どうやらその『おねえちゃん』は例の人形であるらしい事が解る。
 第5話『大きな顔の不思議(OOKINA KAO NO FUSHIGI)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された河原達弘(KAWAHARA TATSUHIRO)の作品。地方に営業に出た時に、障子に映る何とも形容し難い大きな顔を見たと言う声帯模写のSは、その後愛人に包丁でめった刺しにされて死んでしまった。その後ラジオの人生相談で、大きな顔を頻繁に見掛ける様になったという怪奇じみた相談を受けた稲川は、Sの一件との間に「殺意」という共通点がある事に気付く。
 第6話『焼きつけられた情景(YAKITSUKERARETA JYOUKEI)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された河崎千(KAWASAKI SEN)の作品。北海道のビジネスホテルに泊まった稲川が深夜に見た、大勢の人から見下ろされ、眩しい光を当てられるという謎の光景。翌朝ホテルの外に病院がある事に気付き、この場所もかつて病院敷地内だった事を知った稲川は、恐らく自分の泊まった部屋が手術室だったのではないかという結論に至る。
 第7話『六本木に纏わる怪異(ROPPONGI NI MATSUWARU KAII)』は「コミック乱」1999年8月号増刊「コミック 稲川淳二のすご~く恐い話 PART3」に掲載された速瀬みさき(HAYASE MISAKI)の作品。六本木で水商売をしていた学生の頃、芋洗坂(IMOARAIZAKA)でタクシーに相乗りさせた女性が消えてしまったという話を聞いた稲川。それからずっと後になって、取材で六本木に行った際に、窓の閉まったタクシーから身を乗り出す不自然な女の姿を見掛けた稲川は、その場所が芋洗坂であった事に気付く。
 第8話『劇場の恐怖(GEKIJYOU NO KYOUFU)』は「ホラーウーピー」1999年夏号に掲載された桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。美術関係のベテランNが、戦後ある劇場で舞台の裏方として活躍していた頃の話。女優A子の付き人Hが、夜中に楽屋へ忘れ物を取りに行った際、誰も居ない筈の部屋に明かりが点いていて、顔に白塗りの化粧をし続ける女の姿が…。

 今巻を読んでまず最初に抱いた感想は、どの作品も「非常にレベルが高い」という事でした。単純に絵が上手いとかそういう事ではなく、各作家の個性ある作風が、どれも題材となった怪談と非常に上手く噛み合っている様に思えたのです。今回は元になった怪談を知っていた物は1本も無く、どれぐらい作家の独自解釈やアレンジが加わっているのか判断出来ない為に、尚更そう思ったのかも知れませんが、「無理矢理漫画化した」みたいな違和感は、どの作品にも全く感じませんでした。一番個性が際立っていたのは、やはり終始ギャグ調のノリで描かれていた高塚Qの『舞台に墓石を置いたのは…!?』ですが、ギャグ調と言えど怖いシーンではちゃんと怖がらせてくれていましたし、不気味な首なし地蔵、鏡に映る不自然な自分の姿、謎の巨大な顔、居ない筈なのに居る女、顔の崩れた女等、どれも非常に恐ろしい。『夜の訪問者』と『焼きつけられた情景』は「滅茶苦茶恐ろしい話」という訳ではないものの、ずっと昔に通り過ぎた過去の情景に思いを馳せる様な、懐かしさや神秘的な雰囲気が感じられました。


 「コミック 稲川淳二の最新・超怖い話(Comic INAGAWA JYUNJI NO SAISHIN・CHOU KOWAI HANASHI)」 稲川淳二(INAGAWA JYUNJI) 1巻
 角川書店 ザ・ホラーコミックス。2000年7月1日初版発行。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集で、1巻には1999年~2000年に発表された7人の作家による7作品を収録。

 恐怖の1[サーファーの鬘 ~グアム島~(Surfer NO KATSURA ~Guam-TOU~)]は「ザ・ホラー」1999年10月号に掲載された津上柊子(TSUGAMI TOUKO)の作品。グアム島でのロケ時に使った、人毛で作られたカツラに纏わる怪異と、恋人岬を高所から撮影する為に入った、ジャングル内にある元病院跡の廃墟での異様な体験を紹介。
 恐怖の2[N放送の幽霊(N-HOUSOU NO YUUREI)]は「ザ・ホラー」2000年2月号に掲載されたかまたきみこ(KAMATA KIMIKO)の作品。デビュー間も無い頃、深夜ラジオの収録の為に通っていたラジオ局のビルには、ビルの表に面した広い階段と、建物の裏側にある細い階段の2つがあり、何故かスタッフは皆、稲川に表の階段を使う様指示。ある時裏階段を使った稲川は、暗い奥の部屋で佇んでいる女性を見掛けるが、その部屋には鍵が掛かっていて、誰も入れない開かずの部屋になっていたのだった。
 恐怖の3[脂ぎった顔(ABURAGITTA KAO)]は「ザ・ホラー」1999年10月号に掲載された森田さや(MORITA SAYA)の作品。稲川の元マネージャーの弟が自室で金縛りに遭い、気味の悪い脂ぎった顔の男に首を絞められたという体験談を紹介。
 恐怖の4[お通夜を知らせた友人(OTSUYA WO SHIRASETA YUUJIN)]は「ザ・ホラー」2000年2月号に掲載された天草あむ(AMAKUSA AMU)の作品。30数年振りに親友と会った稲川は、長年会っていないもう1人の親友の家の前を通り掛かった丁度その時、彼の通夜が行われていた事を、帰宅後の電話口のメモで知る。その後仕事で疲れて朦朧とした意識の中、死んだ親友が自分を呼ぶ声を聞いた稲川。友人の落語家も、死んだ友人から電話を貰う体験をしたと言い、稲川は、これは死者からのメッセージなのだろうかと問い掛ける。
 恐怖の5[私が殺人死体の発見者(WATASHI GA SATSUJIN-SHITAI NO HAKKEN-SHA)]は「ザ・ホラー」2000年4月号に掲載された香桃ゆうぢ(KATOU YUUDI)の作品。番組の取材で山形に向かった稲川は、用を足す為に入った森の中で、穴に足を取られて転び、引き抜いたその足の下に死体が埋まっているのを発見する。何とこれは稲川にとって5回目の遺体発見との事。
 恐怖の6[もう一人のお母さん?(MOU HITORI NO OKAASAN?)]は「ザ・ホラー」1999年12月号に掲載された三浦晃(MIURA KOU)の作品。小さい頃身体が弱く、よく熱を出して寝込んでいた愛子(AIKO)にとって、夜中に目を覚ました時に、枕元に居る母が頭を撫でてくれる事は、非常に安心感を与えられるものだった。しかし母が出掛けて居ない時にも、何度か母以外の誰かに頭を撫でられた経験があると言う。
 恐怖の7[東北地方の大学生のアパート(TOUHOKU-CHIHOU NO DAIGAKUSEI NO Apart)]は「ザ・ホラー」1999年12月号に掲載されたカネコヒトミ(KANEKO HITOMI)の作品。一人暮らしのアパートの部屋で、掃除の最中に長い女の髪やヘアピンを見付けた学生。彼女など居ないにも関わらず、部屋に女の人影を見掛けたと友人に言われた学生は、友人の協力でお札を部屋中に貼るが、夜寝ている時に周囲を何者かが這いずり回る物音を聞いた後、起きて電気を点けてみると、お札が全て剥がされていた。

 7作品中、私が元になった怪談を知っていた物は[サーファーの鬘 ~グアム島~]と[東北地方の大学生のアパート]の2本。この2本は漫画として読むにも面白いストーリー性のある話なのだが、余りにも出来すぎていて信じられない様な荒唐無稽な話という訳でもなく、[脂ぎった顔][お通夜を知らせた友人][もう一人のお母さん?]といった非常に身近に感じられる話も含め、1巻目であるが故か、全体的に共感を得やすい話を集めた様な印象がある。[お通夜を知らせた友人]の様に似通った複数の話を紹介した物や、特にストーリー性が無い物を漫画化する事は少し難しそうにも思えるのだが、取り上げられている怪談そのものは、舞台となる場所や状況・内容等がかなりバラエティに富んでおり、如何にも「実話怪談を漫画で読んでいる」といった気分を味わわせてくれる。最もページ数が多く読み応えがある話は、全56Pの[サーファーの鬘 ~グアム島~]。


 「コミック 稲川淳二のすご~く怖い話 富士の樹海(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI FUJI NO JYUKAI)」 稲川淳二(INAGAWA JYUNJI)
 稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集。2000年~2002年に雑誌上で発表された作品に描き下ろしを加えた7本の漫画と、怪談2本を収録したコンビニ販売用の廉価版コミック。2003年7月5日初版第1刷発行(2003年6月5日発売) 。

 第1話『彼女たちの修学旅行(KANOJYO-TACHI NO SHUUGAKU-RYOKOU)』は掲載誌及び掲載時期不明、鯖玉弓(SABA TAMAYUMI)の作品。中止となった修学旅行の代わりに、自由研究の名目で高原の貸し別荘へと出掛けた6人の女子高生達。その中の1人・栄子(EIKO)は旅先でボーイフレンドの小林と落ち合う約束をしていたが、貸し別荘へ着いた夜、小林が事故で死んだと知らされる。
 第2話『窓を叩く手(MADO WO TATAKU TE)』は掲載誌及び掲載時期不明、黒百合姫(KUROYURIHIME)の作品。学生の頃、後輩の家に泊まりに行った稲川。夜、窓を叩く音と窓に映る手形、「開けてくれ」「入れてくれ」と叫ぶ男の声に悩まされた稲川は、翌朝後輩から、あの窓の外でタクシー強盗に遭い死亡した運転手が居た事を聞かされる。
 第3話『4枚の絵(YON-MAI NO E)』は掲載誌及び掲載時期不明、河村万里(KAWAMURA BANRI)の作品。父が海で溺れ死んでしまったまさる(MASARU)の遺品を整理していて見付けた、前日にまさるが描いた4枚の絵には、丸で予知したかの様に、その日自分の身に起こる出来事が描かれていた。
 第4話『女の子の忘れ物(ONNANOKO NO WASUREMONO)』は掲載誌及び掲載時期不明、鷲塚三房(WASHIDUKA MIHO)の作品。旅好きの男が車で日本海側を走っていた時に、バス停も外灯も無い場所に佇んでいた少女を車に乗せ、家まで送ってあげるが、その少女が車内に忘れて行ったバッグを届けに改めて少女の家に向かった所、その少女は2カ月前に亡くなっていたのだった。
 「特別企画 稲川淳二のすご~く怖い話 傑作選」では、漫画の元になった怪談2本を紹介。火事で13人の人が亡くなったKホテルの火災は落人の祟りだと言う『惨殺された落人のたたり(ZANSATSU SARETA OCHIUDO NO TATARI)』は玉木奈々冴(TAMAKI NANAKO)と小山田いく(OYAMADA IKU)、海中に沈んでいた漁師の骸骨が突然海面に浮き上がり、中からウナギが出て来たという『ガイコツとウナギ(GAIKOTSU TO UNAGI)』は原田亜香音(HARADA AKANE)によって漫画化されている。
 第5話『207号室の患者(207-GOUSHITSU NO KANJYA)』は掲載誌及び掲載時期不明、琴川彩(KOTOKAWA AYA)の作品。ベテラン婦長がまだ新人看護婦だった頃、夜何度もナースコールを鳴らして、「顔の潰れた女が私を呼びに来るので、部屋を替えて欲しい」と訴える患者が居た。余りに何度もそれが続き、怯え方が普通ではないので、ナースセンターに来る様に促すが、実はその患者は、既に昨夜亡くなっていたのだった。
 第6話『風の音が誘う声(KAZE NO OTO GA SASOU KOE)』は掲載誌及び掲載時期不明、瀬河美紀(SEGAWA MIKI)の作品。家族が皆寝静まった夜に、ドアの向こうから聞こえてくる「開けて…」と言う女性の声。開けようとすると、家の中から「開けちゃいけない!」と、別の女性の声が聞こえてくる。
 第7話『富士の樹海(FUJI NO JYUKAI)』は掲載誌及び掲載時期不明、桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。青木ヶ原の樹海へクイズ番組のロケに行った稲川。暗い森の中に1人で入って行かされた女性アナウンサーは、1ヶ所だけ木の周りに落ち葉が溜まっていて雪が積もっていない場所を見付け、稲川もその場所へ行って写真を撮るが、その後森の奥から大勢の人影が唸り声を上げながらこちらに向かって来る。

 7作品中、私が元になった怪談を知っていた物は『風の音が誘う声』『富士の樹海』の2本。『彼女たちの修学旅行』は「森末さんから貰った話(MORISUE-SAN KARA MORATTA HANASHI)」というタイトルで黒薔薇ちるる(KUROBARA CHIRURU)によっても漫画化されており、これ等稲川怪談の中でも有名な物を含め、体験者には実害の無い正統派の実話系怪談から、関係者に死者が出ている本当に恐ろしい話、ゾッとはさせられるものの、恐怖感よりも不思議さの方が勝っている話等、どれも狙いがハッキリしており、20P~32Pという実話系怪談にしては長目のページ数も相俟って、どの作品も十分な読み応えと満足感を与えてくれる。体験者が子供の頃や若い頃の出来事であったり、死んでしまった者の思い出を偲ぶ様な内容の物が多い為か、全体的に何処かしら懐かしさが漂っている様にも感じられ、こういった雰囲気は非常に好きなもので、今巻収録の作品はどれも甲乙付け難い。Font>

 「コミック 稲川淳二のすご~く怖い話 ~クマノヌイグルミ~(Comic INAGAWA JYUNJI NO SUGO~KU KOWAI HANASHI ~KUMA NO NUIGURUMI~)」 稲川淳二(INAGAWA JYUNJI)
 リイド社 SPコミックス SP Pocket。2006年8月5日初版第1刷発行(2006年7月5日発売) 。タレント・稲川淳二が語る怪談を原作としたホラー漫画短編集で、2005年に雑誌上で発表された作品に描き下ろしを加えた8人の作家による8本の漫画と、怪談1本を収録したコンビニ販売用の廉価版コミック。

 第一話『クマノヌイグルミ(KUMA NO NUIGURUMI)』は掲載誌及び掲載時期不明、高井みお(TAKAI MIO)の作品。梨香(RIKA)は、病気で入院している親友の透子(TOUKO)の見舞いを続ける内、透子の彼氏の坂上(SAKAGAMI)と親しくなり、透子の死後付き合い始めるが、死の間際に透子から押し付けられる様にして受け取ったヌイグルミの存在が気味悪くなり、透子の墓へ置いて帰る。しかし坂上との結婚後、生まれた娘の夕菜(YUUNA)が、何故かそのヌイグルミを持っていて…。
 第二話『暗闇の廊下(KURAYAMI NO ROUKA)』は掲載誌及び掲載時期不明、黒百合姫(KUROYURIHIME)の作品。気の強いベテラン俳優のJFが、唯一「あの時はゾッとした」と語った話。とある劇場で楽屋に台本を忘れて取りに行った際、突然舞台裏の蛍光灯が切れて真っ暗になり、何かに嵌った足が抜けなくなってしまった。そして…。
 第三話『気のせいか(KI NO SEI KA)』は掲載誌及び掲載時期不明、桜水樹(SAKURA MIZUKI)の作品。実家の寺で、広い敷地内の掃除を手伝っていたA子。暗くなっても掃除は終わらず、先に家に戻る事にしたA子だが、誰も居ない筈の道を何者かの足音が付けて来る。
 第四話『首吊り(KUBITSURI)』は掲載誌及び掲載時期不明、原田亜香音(HARADA AKANE)の作品。琴作りの名人だった友人の父親は、子供の頃首吊り死体の足にぶら下がって遊んでいた事があると言う。年老いて入院中の友人の父親は、足が壊死し始めた為に両足切断の手術を受ける事になったと言うが、これも因果か…。
 第五話『トラック島の遺骨(Truk-TOU NO IKOTSU)』は掲載誌及び掲載時期不明、こきま大(KOKIMA DAI)の作品。タレントのT・Sがロケでトラック島へ行った際、現地の宗教上の理由で引き上げる事が出来ない海中の日本兵の遺骨から集めた金歯が売られており、それを買った所、その夜恐ろしい出来事が…。
 「特別企画 稲川淳二のすご~く怖い話 傑作選」では、漫画の元になった怪談『真冬のホテルで宴会する幽霊(MAFUYU NO Hotel DE ENKAI SURU YUUREI)』を紹介。冬場の海を撮影する為に向かった静岡の御前崎(OMAEZAKI)で起こったこの怪奇体験談は、葉弥よしひろ(HAYA YOSHIHIRO)によって漫画化されている。
 第六話『非業の流人と海ボーズ(HIGOU NO RUNIN TO UMIBO-ZU)』は掲載誌及び掲載時期不明、琴川彩(KOTOKAWA AYA)の作品。友人達と三宅島にキャンプに行った稲川。嵐で身動きが取れず救助隊を待っていた所、呼び声の後に近付いてきた足音は、テントの周りを回り続けるだけで一向に声を掛けてくる様子も無く、そのまま朝を迎える。朝になって気付いた事だが、テントは崖に寄せて張っていた為、周りを回る事など出来ない筈なのだ。浜に来ていたおばさんの話では、ここは昔から流れにやられて死体がよく上がった場所だと言う…。
 第七話『真っ赤な闇鍋(MAKKA NA YAMINABE)』は掲載誌及び掲載時期不明、津上柊子(TSUGAMI TOUKO)の作品。蓼科(TATESHINA)高原で番組の収録があった後、闇鍋パーティーをする事になった若手スタッフ達。鍋の中には正体不明の不味い物が入れられており、それを食べた皆が不満の声を上げる中、1人だけ大声で笑っている者が居た。皆は、具合が悪いと言って先に宿に戻った岡田(OKADA)を疑い、文句を言おうと彼の部屋に向かうが…。
 第八話『数学者の解説(SUUGAKUSHA NO KAISETSU)』は掲載誌及び掲載時期不明、瀬河美紀(SEGAWA MIKI)の作品。ドイツの数学者が自著で記した、子供の頃の体験談。父が戦死し、祭りの日にチョコレートを買って貰えず塞ぎ込んでいたハンス(Hans)は、公園で出会った男性にチョコレートを買って貰い、「知らない人に物を貰ってはいけない」と母に叱られるが、その男性はハンスや家族の事をとてもよく知っていたのだった。

 『非業の流人と海ボーズ』は永行古林(NAKAYUKI KORIN)、『数学者の解説』は三浦晃(MIURA KOU)によっても漫画化されており、怪現象のみに焦点を絞った琴川彩版に対し、永行古林版では、別の友人グループとのエピソードや、三宅島での過去の出来事についても詳しく描かれている点、『数学者の解説』の三浦晃版[チョコレートを買ってくれた人(Chocolate WO KATTE KURETA HITO)]では、稲川が知人から本を見せられるという冒頭部分が端折られているといった具合に、同じ話でも作家毎に細かい違いがある。これ以外に私が元になった怪談を知っていた物は1本も無く、表題作の『クマノヌイグルミ』を始め、『暗闇の廊下』『首吊り』『真っ赤な闇鍋』等、タイトルにまずワクワクさせられる事が多かった。
 『暗闇の廊下』『気のせいか』『トラック島の遺骨』『非業の流人と海ボーズ』は、体験者には実害の無い正統派の実話系怪談、『クマノヌイグルミ』『首吊り』『真っ赤な闇鍋』は、関係者に死者が出ている本当に恐ろしい話、『数学者の解説』のみ、ハートフルな内容のちょっと良い話となっている。『クマノヌイグルミ』の梨香や『首吊り』の友人の父親、『真っ赤な闇鍋』の若手スタッフ達には自己中心的な言動が目立ち、必ずしも全面的に感情移入出来るという訳ではないのだが、それも又実話系ホラーの醍醐味であると言えよう。どのタイプの作品も皆それぞれに読み応えがあって面白く、特に桜水樹の『気のせいか』を始め、正統派の実話系怪談はどれも漫画にしづらい話を上手く纏めていると思いました。
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